吸入麻酔の導入の速さについて、イメージしづらく、
ちょっとややこしいので、なかなか知識が定着しません。
今回は、この問題です。
101B-74
吸入麻酔で導入時間が短くなるのはどれか。1つ選べ。
- 心拍数の増加
- 心拍出量の増加
- 収縮期血圧の上昇
- 肺胞換気量の増加
- 機能的残気量の増加
正答 4
まずは消せる選択肢
4.血圧は関係ないのでまず消せます。
5.機能的残気量も、呼吸に使ってない余りスペースなので、
それが増えたら、麻酔ガスが効率的に脳に届かなくなり、これも消せます。
悩む選択肢
「1,2の循環系の増加」と「4.肺胞換気量の増加」、
どちらも、脳に麻酔ガスが早く、たくさん届きそうな気もするし、
早く脳から麻酔ガス成分がいなくなってしまう気もするし、
ちょっと迷ってしまします。
まーでも、1つ選べなら、「4.肺胞換気量の増加」しかないので、
選べますが、全て選べで聞かれることになる可能性ありますから、
ここはきちんと理解しておきたいところです。
吸入麻酔とは
吸入を開始したとき、最初の麻酔ガス分圧は
肺胞内 > 動脈血 > 脳
の順になっている。上記のイラストのように、ガスが通る順に高くなっていることがわかる。通っていく間にどんどんガスがなくなっていって薄くなっていくので、当然のことだろう。
そして、しばらく時間が経つと平衡状態になり、それで吸入麻酔が効いている状態になる。
吸入ガス麻酔の本質は、
「脳へ麻酔ガスをどれだけ届け続けられているか」
ということになる。
ここで、「肺胞換気量の増加」と「心拍出量の増加」がなぜ違いが出てくるのかすごく疑問に思う。
どちらも高まれば脳へのガス濃度が増えるように思えるからだ。
「肺胞換気量の増加」→ガスがたくさん入ってくるので、脳にもたくさんガスがいって導入早い:正解
「心拍出量の増加」→血流が多いので、脳にたくさんガスが届けれられて、導入早い?:間違い
心拍出量の増加のときに麻酔ガス濃度がどんな変化を示すのか、が知りたいですね。
心拍出量の生理を知ることが重要
心拍出量の増減と、肺胞換気量の増減は、意味合いが違ってくる。
次の大原則をしっかりと刻みこむことが必要だ。
「脳への血流量は、どの臓器よりも優先して一定に保たれている。」
だから、心拍出量が増えた時には、脳以外の臓器、筋肉や他の組織への血流量が増えるということを意味する。
よって、その時、麻酔ガスが脳以外にもいってしまうことを考えると、導入の速度は遅くなることがわかる。
逆に、心拍出量が減った場合、脳への血流量は何としても一定に保つため、
筋肉などの血流量を減らしていく。相対的に、脳への血流の配分が増えるので、
麻酔ガスがより多く脳へ届く状態になる。
「肺胞換気量の増加」→ガスがたくさん入ってくるので、脳にもたくさんガスがいって導入早い:正解
「心拍出量の増加」→血流が多いので、脳にたくさんガスが届けれられて、導入早い?:間違い
「心拍出量の増加」→脳より全身系の血流量が増えるので、脳へのガス量が減り、導入遅い:正解
注意しなくてないけないのは、
心拍出量 ≒ 肺血流量ということだ。
肺胞換気量と肺血流量の意味するところが逆になっているので、これはかなりややこしい。
肺胞換気量は絶対重要
肺胞換気量は麻酔ガスの生体への入り口なので、
増えれば増えるほど、体内にガスが供給されることになる。
麻酔ガス濃度が増えても、生体に入ってくる量が増えるので、
導入速度は速くなることがわかる。
ガス麻酔薬と静脈麻酔薬の違い
今回は以上です。