組織

基礎系、最強の参考書

今日はこの問題です

109A-46

舌咽神経によって支配されるのはどれか。2つ選べ。
a 声帯
b 舌下腺
c 頸動脈小体
d 茎突咽頭筋
e 口蓋帆張筋

正答 c d

舌咽神経の支配についての設問です。dの茎突咽頭筋は、簡単に選べると思います。声帯ってどの神経だっけ?頸動脈小体は、どこにあるのか、何をやっているのか、昔生理学で習ったけど、、、明確にイメージができない、、、解剖の講義でのまとめをみると、、、

舌咽神経

  1. 【運動】茎突咽頭筋・上咽頭収縮筋(疑核→舌咽神経→頚静脈孔→茎突咽頭筋・上咽頭収縮筋)
  2. 【感覚】咽頭の感覚、舌後ろ1/3の感覚と味覚
  3. 【副交感神経】耳下腺の分泌(下唾液核→舌咽神経→頚静脈孔→鼓室神経→小錐体神経→蝶錐体裂→耳神経節→耳介側頭神経に伴行→耳下腺)
  4. 【自律神経系?】頸動脈小体(血中CO2濃度センサー)、頸動脈洞(血圧センサー)
のような感じでしょうか…

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カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄ほか 日本医事新報社  より

  

 

基礎系は、底なし沼

例えば、この問題で間違ったとして、その後の勉強はどの範囲までカバーして拾っていくでしょうか。上に書いた舌咽神経の支配や走行を覚えるのは必要でしょう。

また、選択肢の中のよく知らない単語を調べることも重要です。今回で言えば、私は「頸動脈小体」についてその機能などがぼんやりな感じでした。2年の生理学で習ったはずの細かな知識。こういったものを繰り返し復習して身につけなければなりません(しんどい…)。

「頸動脈小体」が舌咽神経支配だということよりも、「人体のpH調整」や「呼吸中枢との関係」など、、、のほうが重要かもしれません。こうして雪だるま式に覚えることが増えていきます。

このように基礎系の科目は、臨床系の科目に比べて勉強のコスパが悪いです。6年生から勉強しようとした時、その膨大な量に呆然とすると思います。しかも沢山覚える割に、国家試験では数問しか出題されないというドMな構造。必死に覚えても、数カ月後に忘れまくっている。。。しかし、できるヒトはみんな解けてしまう。丸暗記では到底太刀打ちできません。

効率的に基礎系を勉強するにはどうしたらよいでしょうか?

 

実践の解説やNEW TEXT?

例えば実践での「頸動脈小体」の解説はこれだけです。

頸動脈小体は舌咽神経に支配されている。生命維持に関わる動脈化学受容器に一つで、動脈血の酸素分圧の低下、二酸化炭素分圧やH+濃度の上昇を感知し呼吸数や一回換気量、心拍数、1回拍出量を増加させる。

この文章を呼んで、100%、人体のpH調節と頸動脈小体の役割について理解できる人は少ないと思います。特に僕は文章だけの説明から実際の現象をイメージするのがヘタで、わかりやすいイラストや図説などがないとうまく定着できず丸暗記になってしまいます。NEW TEXTなどもコンパクト過ぎてイメージがもてず丸暗記になりがちです。もっと、図とかイメージでもって、実際に働いている様を文脈とか流れ、物語として理解させてほしい!!

 

この本がお薦め「人体の正常構造と機能」

この本、医科系のなんですが、人体、解剖、組織学、生理学、生化学など横断的にまとまっています。そして絵や図が非常にわかりやすい!Amazonの評価も異常に高いです。例えば頸動脈小体を調べたいと思ったら、、、 

 頸動脈小体 大動脈小体 詳細
カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄ほか 日本医事新報社  より

こういう感じで、ズバッとでてきます。

  • pHは、化学受容器の頸動脈小体
  • 血圧は、圧受容器の「大動脈小体+頸動脈洞」
というのもまとめて覚えるのが良いですよね。そしてそれぞれの紐付いている神経もイメージしやすくのっているのがいいです。その神経は中枢で呼吸中枢とかに接続していくんだな―とか。動脈のそばに小体がついているから、そのまま血のpH濃度を測れるんだな―とか、頸動脈小体は舌咽神経だけど、大動脈小体は迷走神経なんだなーとか、この絵をみることでイメージできます。
  

人体では、pHや血圧をどのように調整するんだっけ?  

そして、読むうちに、センサーが頸動脈小体だとして、その後どうやってpHを調整しているんだろう?、、と疑問がわいてきます。そういった疑問をさくっと読んで解消できるのがこの本のすごいところです。生理学的な人体の機能と解剖・組織学の構造のあたりであれば大抵のことが超わかりやすく解説されています。実際に少しみてみましょう。

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カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄ほか 日本医事新報社  より
 
 

化学受容器が動脈血のガス分圧を監視し、呼吸を調節する

このフレーズは、「化学受容器」の説明ページのタイトルなんですが、どれもタイトルが秀逸なんです。一文だけでぐっと理解させるわかりやすい見出し。

実際に「化学受容器が動脈血のガス分圧を監視し、呼吸を調節する」というタイトルとその短い文を読むだけで「なるほど!呼吸でCO2(=酸のもと)を排出して、体内のpHを調整できるんだ!」というのがすぐ理解できてしまうというか。

例えば、運動時で乳酸が沢山産生され、H+が増え、身体が酸性に傾いたときの調整はこうです。

  1. 化学受容器=頸動脈小体は頸動脈にあるので、そこの血液からCO2濃度上昇を感知
  2. 「頸動脈小体」→「舌咽神経」が興奮
  3. 舌咽神経の興奮が、呼吸中枢へ
  4. 呼吸中枢から呼吸を促進する命令がでる→沢山息を吐いて、CO2を外に出す
  5. H+ + HCO3- → H2CO3 → H2O+CO2 この式でCO2がでていってくれるので、右向きの反応が加速しH+を沢山回収できる。
  6. 左端の重炭酸によるH+の緩衝がすすみ、pHが下がる
というところまで、数ページ眺めるだけでまとめて理解できてしまします。
 
何より、この本は、全て「1見開き、1テーマ」で完結するように書かれています。長々と詳しい専門的な説明、というよりも、短い文で全体をつかむための内容で「へーヒトってそうやって動いているんだ―よく出来ているなー」という瞬間が多く訪れてきます。図と文章が相互に説明しあっているというか、読んでいて本当に理解が早いです。
 
 

大きな括りで俯瞰的なまとめ

上の図は「血圧調整」と「pH調整」のまとめという観点からも秀逸です。なかなか神経と器官の位置が入り組んでいて、複雑なんですが、「pH調節」と「血圧調節」の2つの系が連動して機能している様がわかりやすい。しかも、説明も短く最低限です。本当に質の高い本だと感心させられます。幾つかの本から寄せ集めれば同じクオリティの図版と説明がそろうとは思いますが、一冊に全部のっている本はなかなかないと思います。

 

血圧の調整はもっとわかりやすかった

さらに「大動脈小体」「頸動脈洞」などの圧受容器のセンサリングから始まる血圧の調整機構もわかりやすいイラストと短いシンプルな説明でささっと頭に入ってきます。
血圧調節
カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄ほか 日本医事新報社  より

この3つの輪のイラスト、感動しました。血圧が「末梢血管抵抗」「心拍出量」「循環血液量」で決定されているということと、その調整が「自律神経系」「ホルモン」「腎臓」という大きく3つの手段で調整しているということが実にきれいに表現されています。血圧って血管にかかる圧力だから、たしかに管自体が縮めば圧力あがるし、中の血液量自体が増えれば血管の圧力が上がりますよね。そういうところまでイメージしながら理解を導いてくれる感じがすごくいいんです。
この他にも循環系の説明は、さらにわかりやすい図と説明が続くので、ぜひ実物を読んでみて下さい。

 

歯科にはうれしい嚥下系の内容も豊富

 解剖系は図のきれいさやわかりやすさが重要なんですが、骨学も筋も脈管、神経も図のクオリティがやばいです。動きなど解説されていわかりやすいです。

また、歯科医師必須の咬頭、声帯周りの軟骨と筋肉などの豊富です。声帯を緊張させる唯一の筋肉、「輪状甲状筋」ってすごく軟骨との動きがトリッキーでイメージしづらいんですが、見事に図説されています。「輪状甲状関節」がポイントだったんですね。また文章の解説もわかりやすいんです。ぜひ実際に読んでみて下さい。

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カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄ほか 日本医事新報社  より

 

「組織学」も載ってます!

組織学的な図も秀逸。タイト結合が、帯状にしっかりと細胞間をまさに「タイトに」くっつけている様もわかりますし、接着斑とそれにくっついている細胞骨格=アクチン系で、デスモゾーム結合には中間径フィラメントなのも綺麗に表現されています。デスモゾームとヘミデスモソームが同じ色で、ほんとに基本的に同じもんなんだな―というのもわかってよいです。

組織学では、各臓器、典型的な組織像なんかも豊富に掲載されていて、マクロからミクロまで一気通貫で読み通せるので、理解を深めやすいです。

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カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄ほか 日本医事新報社  より

 

「生化学」も載ってます!

生化学の糖代謝もすごいです。細かいのはどこにでも落ちてるんですが、糖代謝と脂質代謝からめてここまで綺麗でわかりやすい図はみたことがありません。ペントースリン酸回路のあたりの組み込み方とかすごいです。頭のなかでばらばらだったものがホント1つにまとまって整理できる感じがします。

シグナル伝達系の図説も豊富で、リガンドからどの受容体で細胞内でどんなことがおきていくのか、しっかりと書いてあります。ほんと俯瞰的というか網羅的というか、そのコンセプトと定着具合が素晴らしいと思います。

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カラー図解 人体の正常構造と機能 坂井 建雄ほか 日本医事新報社  より 

 

重要なこと:科目を越えて知識を結びつけていくこと

もしあなたがまだ低学年でこれから基礎系の科目を受けていくのであれば、この本をおすすめします。講義の復習、テスト勉強の度にそこを読んでおくだけで、知識のストック、まとまり方が全然違うと思います。6年生でも、今から基礎を仕上げなければいけないのであれば、すごい助けになると思います。

我々は結局は「ヒトの身体のこと」を学んでいるはずで、解剖、生理、生化、薬理など科を分けて学んでいたことを、最終的には1つのオーガニックなイメージにまとめていく作業が必要です。

この「統合」作業は残念ながら、学校では教えてくれません。各科のスペシャリスト、専門に詳しい人はいくらでもいますが、国家試験の全範囲をまんべんなく広く深く研究する科目はなく、それ専門の人材を多くの大学は雇っていないからです。大学の先生が、普段の知識のまま勉強せずに国家試験受けたら、合格できるのは何%になるでしょうか。

なので科目間の統合については勉強している「あなた自身」でやるしかなく、正にCBT、国家試験の点数差はそこのまとめ方のセンスに大きくよっていくような気がします。丸暗記では膨大な量でも文脈や論理やストーリーにまとめあげていけると「覚える」のではなく、まさに人体の生きるイメージが頭の中に自然にできあがっていきます。そういった作業の助けになるのがこの本だと思います。実際に私自身が歯学部で勉強してきた経験から自信をもっておすすめできる本です。

 

知識の値段はいくらだろう

この本は2万弱もするため、そう安々と買うことはできません。その2万円にはどのような価値があるんでしょうか。例えば「現金」や「宝石」は誰かに奪われたりしたらそれで終わりです。しかし、自分の中に吸収した知識・理解・技術は誰にも奪うことはできません。私達の中に一生根付く貴重な財産です。そして、その知性を必死に磨き続け、多くの人を救っていくのが我々医療人の生業なのではないでしょうか。

留年すれば、学費はいくらかかるでしょうか、国家試験おちれば、予備校通うのに1年間200万かかります。知識に値段を付けることはできませんが、多少本を買って効率的に勉強でき、正しいイメージを築き上げていけるのであれば、その方が安上がりだと考えます。

勉強は、時間もお金も労力も、最小限で終わらせたいです。どのような形があなたにとって、もっとも効率的となるのか今一度、改めて試してみるとよいかもしれません。「勉強の仕方の勉強」ともいうべきか。

最後は異様なテンションになってしまいましたが、今回は以上です。(ステマ記事みたいになってしまいましたが、お金は一銭ももらってません!正直なこの本への愛をつづっただけです…)

 

 

【生理学】おすすめの参考書 

1.人体の正常構造と機能 ★★★★★★★

本当にすごい本だと思います。解剖、組織、生理、生化の各分野を横断して、人体の仕組みをわかりやすく解説してあります。基礎系で、つまずいたときにはまずこの本を開いています。 

最新の第三版では、なんと同じ価格で電子書籍もついてくる!という超オトクな特典がついています。これはもう買うしかないですね。電子書籍ならスマホやタブレットで文字検索して一発で見たいページに飛べますからね。もうほんと最強だと思います。 

特に「絵」と「図」が秀逸で、イメージしにくいところをかなりわかりやすくシンプルな表現をしています。本当にこの本がなかったら、分野別でバラバラのままだった知識が沢山あり、その多くがこの本を読むことでまとめあげられました。 シンプルな言葉と絵で構成されているので、わかりやすい分、足りないところがありますが、まずはこれで大きな流れをつかむことが、非常に重要です。その後細かいところ、肉付けしていくのが効率的です。

基礎で言うなら、この本と「Essential細胞生物学」が2大名著だと思います。2万弱で少し買うのに躊躇しますが、マストバイ!のおすすめの一冊です!

 

2.トートラ人体の構造と機能 ★★☆

上で紹介した「人体の正常構造と機能」と系統は似ていますが、こちらも解剖、組織、生理、生化など、統合的に理解していくのに役立ちます。やはり絵が綺麗で、シンプルでわかりやすい。同じことを2冊の本でみると理解がより立体的になってきます。外国語を2つぐらい習うと日本語の特徴がよりわかってくるのと類比的というか。図書館などにあれば、ぜひパラパラめくってみましょう。なるほど、そういうことだったのか、という頷きをできるだけ多く得ましょう。そしてそれらのページを後でフィードバックできるようにまとめていくのです。

 

3.基礎歯科生理学 医歯薬出版 ★☆☆

口腔生理学の教科書がいいのがありません。泣。おそらく多くの人が教科書として買わされていると思います。国家試験は医歯薬出版のシリーズがバイブルで、これにのっていることから出題されるので、知らないことがでてきたら一度はそこのところをこの本で読んでみることをおすすめします!全然、読んでて勉強なるので良いのですが、もっとわかりやすく、いい本ができるとよいなーと思います。

内胚葉、中胚葉、外胚葉

発生はまず、内胚葉がベースになる。「人体は、パイプである」って、すごい面白い表現があって。考えると本当に、口から肛門まで、つまり消化から排泄までのパイプで中空なんです。パイプがいわゆる「内臓系」で、パイプの中は人体の「外」とされています。口から食物をいれて、消化し、エネルギーを得、その搾りかすを排泄する。原始的な生物の形態はそこからはじまります。パイプだけでは、食べ物が来るのをずっと待っているしかないので、ここでさらに次の段階があるわけです。
次に進化するのは、

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