保存修復

隔壁3兄弟

まぎらわしい!「隔壁」は、3つあります。

隔壁には大きく以下の3種類があります。名前をつけた人を本当に恨みます。これが本当にややこしい。隔壁の3種類については、明確に覚えておきましょう。

  1. 保存修復|歯を削るときに隣の歯を傷つけないようにする壁=隔壁
  2. 保存修復|削った後CR充填しやすいように周りを取り囲む壁=隔壁
  3. 歯内療法|削りすぎてラバーダムできない歯質にCRで盛って作る壁=隔壁

 

1.保存修復|歯を削るときに隣の歯を傷つけないようにする壁=隔壁

1

 

 

2.保存修復|削った後CR充填しやすいように周りを取り囲む壁=隔壁

2

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

 

 

3.歯内療法|削りすぎてラバーダムできない歯質にCRで盛って作る壁=隔壁

 隔壁形成 80

上の3つの写真は、目的が違うものですが、どれも「隔壁」という名前が付けられています。

 

1.歯を削る時(保存修復法)の隔壁

隣接面を削るときに、隣の歯を削らないように引いておくカバーを隔壁と呼ぶことがあります。隣接歯面の切削被害を防止したり歯周組織を損傷したりしないことが目的です。

2.充填する時(修復法)の隔壁

充填のときの隔壁は、CRを盛りやすくするために壁を立てることです。これにより、

  • 接触点の回復ができる
  • 隣接面の形を作りやすくする

ことが可能になります。難しい言葉を使うと複雑窩洞を単純化して材料の填塞や圧縮などの操作を容易にし形態付与をしやすくし、填塞された材料の強度が保たれるようになります。

2

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

接触点の回復は、歯間離開をすることも重要になります。以下の図をみるとわかりやすいかもしれません。

歯間離開 隣接面接触点の回復

 歯間離開についてこちらの記事も読んでみて下さい。

「プレウェッジ」と「ウェッジ」
http://www.kokushi.space/?p=1131

 

充填の隔壁法で使う道具が超重要

充填時の隔壁法では、使う道具にいくつか種類があり、名前とモノを頭のなかで一致させておく必要があります。正確に細かいところまでイメージできるようにならないと国家試験ででつまずくことになります。以下の3つのポイントが重要です。

  • 透明フィルム(前歯部用)か、金属のフィルム(臼歯部用)か
  • フィルムを押さえるのは何か|指、トッフルマイヤー、リング状リテーナー、アイボリー/エリオットのセパレーター
  • 歯間離開は何でやっているか|ウェッジ、リング状リテーナ、

具体的には、大まかに以下の5種類を押さえておけばよいでしょう。どれも充填用の隔壁法です。フィルムを保持し歯間離開するために何が使われているのか。そして、そのことによって「接触点の回復」「隣接面の携帯が作りやすく」なっていることもイメージしながら…

  1. ストリップス(透明な帯のフィルム=前歯部の充填で多い)
  2. トッフルマイヤー型(古典的で強固)
  3. セクショナルマトリックス(セクショナルバンド)型|リング状リテーナーで保持
  4. セクショナルマトリックス型|アイボリー/エリオットのセパレーターで保持
  5. オートマトリックス、Tバンド(バンドだけで結べて、保持の器具がいらない)
 

1.ストリップス(透明な帯のフィルム=前歯部の充填で多い)

スクリーンショット 2017 01 18 0 46 43
保存修復学第5版-2007-平井義人-他-医歯薬出版

 

2.トッフルマイヤー型(古典的で強固)

スクリーンショット 2017 01 18 0 44 06
保存修復学第5版-2007-平井義人-他-医歯薬出版

3.セクショナルマトリックス(セクショナルバンド)型|リング状リテーナーで保持(製品名:バイタインリング)

金属製ではなく、透明なセクショルマトリックス、透明なリング状リテーナー、透明なウェッジ(光導型ウェッジ)もあります。それらは光を透過するのでレジン光重合がさらに強固にできる様になっています。

スクリーンショット 2017 01 18 0 44 24

保存修復学第5版-2007-平井義人-他-医歯薬出版

 

4.セクショナルマトリックス型|アイボリーのセパレーターで保持+ウェッジで歯間分離

スクリーンショット 2017 01 18 1 01 56
保存修復学21-第3版-2008-田上順次-他-永末書店

 

5.オートマトリックス

2

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より
 
 

セルロイドストリップスは前歯!セクショナルマトリックスは臼歯!

このような細かいところをつかれることがあります。セルロイドストリップスは透明なフィルムのことです。レジンを光重合するときに、光が透過するので便利です。主に前歯部で使用します。一方、臼歯部は金属のフィルムを使うことが多いです。臨床では、臼歯部でも透明のフィルムと透明なウェッジや透明なリング状リテーナーなど使って治療すること多いですが、国家試験的にはまだ出てきていません。透明なウェッジのことを「光導型ウェッジ」と呼びます。

次のうち前歯部のCR修復に使うものはどれか。すべて選べ。

  1. セクショナルマトリックス
  2. サービカルマトリックス
  3. アイボリー型リテーナー
  4. セルロイドストリップス
  5. エリオット型リテーナー
  6. トッフルマイヤー型リテーナー

 正答 2, 3, 4, 5(エリオットは主に臼歯部ですが、前歯部でも使用可能です)

 

 

3.根管治療の時(歯内療法)の隔壁

根管治療のときに「隔壁」といったら「根管に唾液が入らないように、きれいに保つため」に行います。具体的には、虫歯が進んで歯冠が殆ど残ってない時、細菌感染(コロナルリーケージ)を起こさないように、歯の周囲に壁を作ることによって、ラバーダム防湿を可能にすることが目的です。そう、根管治療の隔壁は誰のためにやるのかというと「ラバーダム」様のためにやるのです。

追加で、周りに強固な壁をつくってあげて、歯質を一次的に回復したような状態にしておくことで、仮封材の封鎖性も高くなります。術後、次の処置までの仮封剤をボロボロの歯冠に使っても弱いのですぐ壊れてしまいます。CRで強固な壁を作って、ちょこっと蓋をしてあげることで、仮封が強固になります。
隔壁形成 80

 

 

関連する過去問を解いてみよう

104B-43
45歳の男性。下顎左側第一大臼歯の咬合痛を主訴として来院した。感染根管治療を行うこととした。 クラウンと感染象牙質を除去した後の口腔内写真と感染根管治療開始日の口腔内写真とを別に示す。
感染根管治療開始前に行った処置の目的はどれか。2つ選べ。

隔壁形成写真 80

a 歯質の保存
b 咬合の維持
c 仮封の強化
d 審美性の回復
e 術野の汚染防止

 

正答 c, e

 

「仮封の強化」が答えづらいですが、 C4ぐらいのボロボロの歯冠に仮封剤を強引に使っても弱いのですぐ壊れてしまいます。すると根管が細菌に汚染されてしまいます。そこで、CRで強固な壁を作って(隔壁の形成)、ちょこっと仮封剤で蓋をしてあげることで封鎖性が強固になります。

 

105D-9
26歳の女性。上顎左側小臼歯部の食片圧入を主訴として来院した。上顎左側5に自発痛はなく,歯髄電気診に反応する。コンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真とエックス線写真とを別に示す。爾窩の開拡にあたって必要な前準備はどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2017 01 18 1 19 46

 

a 隔壁
b 咬合調整
c 歯肉圧排
d 歯間分離
e ラバーダム防湿

正答 d e

ややこしいですが、削るときの隔壁も必要な気がします。でも、それ以上に「ラバーダム」は必須ですし、歯間離開は絶対的に重要です。その上でさらに削らないように隔壁を立てると安全になりますが、必須ではありません。3つ選べであれば、a, d, eが正答になっていたでしょう。

 

 

 

106B-4
36歳の女性。上顎左側臼歯の冷水痛を主訴として来院した。上顎左側5にコンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真、エックス線写真及びう蝕除去中の口腔内写真を別に示す。
矢印で示す器具の使用目的はどれか。1つ選べ。修復の隔壁

a 隔壁
b 防湿
c 歯問離開
d 歯肉排除
e 隣接歯保護

正答 e

 

この問題で、Cの写真に使われているのが、歯を削る時にでてくる隔壁です。問題を解く上では関係ないですが、この銀色のフィルムで歯を削る時に隣の歯を削ってしまわないようにガードしています。このガードのことを「隔壁」とも呼びます。問題では「目的」を聞かれているので、隣接歯保護が正答ですが、名前を聞かれたら、隔壁が答えにもなります。

 

 

93B-18
隔壁法におけるクサビ使用の目的で正しいのはどれか。2つ選べ。

a 歯間部の歯肉を圧排する。
b マトリックスバンドを圧接する。
c 接触点に間隙が生じるのを防ぐ。
d 辺縁隆線部の形成を容易にする。
e 複雑窩洞を単純窩洞化する。

正答 b c

bはこれまでの説明ですぐ理解できるかと思います。もう一つは、きっと「歯間離開」の効果について選べばいいんですが、cの「接触点に間隙が生じるのを防ぐ」というのがわかりずらいです。「接触点をきちんと作るためにやるものなのに、、、、」と思っちゃいますが、昔の問題なので、日本語がちょっとややこしい表現になっています。

要は、隔壁を使用して、歯間離開しないままだとその隔壁のフィルム厚さ分、歯間が空いてしまうということです。それを、ウェッジなりセパレーターなりをいれて歯間離開をすることで、そのスペースを利用してフィルムの厚さ分だけ多くもれるので、歯間離開を戻した時にピッタリと接触する形を作れるでしょうということです。もっと、隣接面の形の付与がし易いとか接触点の回復が可能とか、書いてくれればいいんですけどね。これからの国家試験ではこのあたりの分かりづらい表現に関してはブラフュアップがしっかりとかかっていくようになっているので、このような形で難しくなることは殆ど起きないとは思います。

 

 今回は以上です。

 

 

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼ってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。「医歯薬出版の保存修復学」は網羅的に書いてありますが、写真や図が小さく文章で理解する割合がより多い印象を受けます。勉強が進んできてだいたいのことがわかってくると、こちらのほうが面白く感じてくるのですが、最初の段階では「保存修復学21」を携えて勉強したほうがよりわかりやすく学ぶことができると感じています。

編集仕方というか、ページのまとめ方や文字と写真、イラストの並べ方など「保存修復学21」のほうが読んでいて非常にわかりやすくできていると思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

 

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

臨床問題を得意になるコツは、基本的な処置や考え方などを1.にあげたような教科書の内容を一通り読んでから、あとは、臨床の処置の写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

もちろん、5,6年次の臨書実習のリアルな処置と教科書の内容を自分で紐付けることは非常に重要です。教科書は、臨書実習の具体的な処置内容をまとめてより抽象的に、学術的にまとめたものです。机上の勉強ではそれらをつかむだけなのでなんとなく体感がなくぼんやりとした理解ですが、その文章化された診断や治療内容を具体的なやり方・道具、手順などを実際の体験と紐付けることでより深い理解になります。そうすると国家試験のやったことない臨床問題でも、頭のなかでイメージして、正解に自分でたどり着けることが多くなります。

「プレウェッジ」と「ウェッジ」

教科書に書いていないけど、区別が重要な「プレウェッジ」と「ウェッジ」

下の2つのウェッジはいずれもモノとしては同じですが、使用方法の違いで名称が変わります。

Wedge prewedge

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

 

プレウェッジ=歯を削る時に使う

「感染歯質を削るとき」に使うウェッジです。歯の間に挟んで歯と歯の間を開きます。また、誤って歯間乳頭を削ってしまわないように、プレウェッジを挟んでガードします(歯間乳頭の保護)。また、歯を離すことで隣接面を削りやすくする目的もあります。下のウェッジとものとしては全く同じものなんですが、使い方で名前が変わっています。

  1. 歯間離開
  2. 歯間乳頭の保護 

ウェッジ=充填する時に使う

プレがつかないウェッジは、「CR充填するとき」につかいます。もちろん、プレウェッジもウェッジを使用するので「歯を削る時」にもウェッジを使うので、どちらの用途にも使うのですが、特に歯を削るときのウェッジを「プレウェッジ」と呼びます。

歯と歯の間を離して、隣接面の接触点の形を作るスペースを作ります。隣接面が削られた状態では、隣接面の接触がなく、歯と歯の間が狭まっているので、そのままCRつめても正しくない隣接面形態になります。そこで、歯間にウェッジを挟んで歯間にスペースを作って、それぞれの隣接面の形態を作った後、ウェッジをとることで、やっと、正しい歯間距離で、隣接面が接触する、という流れです。

また、CR充填しやすいように隔壁(マトリックスバンドや透明ストリップスなど)の固定も同時に行うことができます。この場合、歯間乳頭の保護という目的はありませんね。また、歯を離すことで光照射もいろいろな角度から行うことができるようになる利点もあります。

  1. 歯間離開
  2. 隣接面の接触点の回復(歯と歯の接触点が点で接するように綺麗な曲線をつくれる)
  3. マトリックスなどの固定
 

「 隣接面の接触点の回復」とはどういうことか?

 ウェッジによる歯間離開のポイント2で、「 隣接面の接触点の回復」とありましたが、これはどういうことなのでしょうか?以下のような図を描いてみました。こちらを見るとよりわかりやすいかもしれません。
 
歯間離開 隣接面接触点の回復
 
Bの状態で、充填が完了して、ウェッジを引き抜くと、元の正常な隣接面の状態に戻りますよね。普段の清掃や食物残渣の残りやすさを考えると隣接面は、点接触が理想的な形態です。
 
小児の乳歯DE間は面接触なので、より、う蝕になりやすかったですよね。点接触がやはり好ましい形態です。また、隣接面に接触点が無いと今度は、食片圧入などで歯周疾患へのリスクが高くなってしまいます。直接法のCR充填はチェアサイドでやるので、難しいですが、このあたりも考慮して治療に臨んでいきたいところです。
 
 
 
 
 

国家試験における「プレウェッジ」と「ウェッジ」

国家試験の問題を通して、「プレウェッジ」と「ウェッジ」を意識的に見ていきましょう。これまで学んだことの復習にもなります。写真で歯間に挟んであるものが、プレウェッジなのか、ウェッジなのか、予想しながら、問題を解いていきましょう。
 
107B-4
43 歳の女性。下顎左側第一大臼歯の歯質の破折を主訴として来院した。自発痛は なく、歯髄電気診に反応を示す。コンポジットレジン修復を行うこととした。修復 操作中の口腔内写真(別冊 No. 4)を別に示す。 次に行う操作はどれか。 2 つ選べ。
スクリーンショット 2017 01 13 2 26 27
 
a 隔壁の設置
b 修復物の除去
c 齲蝕病巣の除去
d ウェッジの除去
e ボンディング材の塗布
 
正答 b, c
 
↑この問題の場合は、「プレウェッジ」を使っていますね。CR充填時の「ウェッジ」ではないので、隔壁は関係ない、ということになります。
 
 
 
103B-8
32歳の男性。下顎右側大臼歯部の食片圧入を主訴として来院した。自発痛はなく、温度診に異常を認めない。コンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真とエックス線写真とを別に示す。
適切なのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2017 01 13 2 33 10
スクリーンショット 2017 01 13 2 33 14
 
a プレウェッジを行う
b ラバーダム防湿を行う。
c レジンコーティングを行う。
d エアブレイシブで切削する。
e 水酸化カルシウム剤で覆髄する。

 

 

正答 a,b

 
↑この症例もプレウェッジです。感染歯質を削る時の、隣接歯の保護と歯間乳頭の保護を行います。国家試験では、ラバーダム無しの治療はほぼないので、選択肢にあるとほぼ、正答肢になることが多いです。処置の順番を聞かれれて、ラバーダムはもっと後ですよ、みたいな感じで答えにならなかったりすることはありますが、全ての歯内治療、CR修復などではラバーダムを使用して治療を行う設定になっています。 
 
 
 
 
103D-52
34歳の女性。下顎右側第一大臼歯の冷水痛を主訴として来院した。2週前から一過性の冷水痛を自覚するようになったという。電気診に正常に反応する。コンポジットレジンで修復することとした。初診時のエックス線写真と感染象牙質除去後の口腔内写真とを別に示す。
修復に必要なのはどれか、2つ選べ。
 
スクリーンショット 2017 01 13 2 40 08
 
a ウェッジ
b 圧排用綿糸
c セメント裏層器
d マトリックスバンド
e サービカルマトリックス
 
正答 a, d
 
↑これは、充填時の「ウェッジ」です。「プレウェッジ」ではありません。ちょうど下の右の図のような感じにして、CR充填をしていきたいので、ウェッジとマトリックスバンドを使用するのが正答になります。この作業のことを「複雑窩洞(隣接にも咬合面にも開いている窩洞)を単純窩洞(咬合面にのみ開いている窩洞)にする」という表現を使うこともあります。言葉の使い方がわからないだけで、問題が非常に難しくなってしまうことが多いので、知らない表現がでてきたら、その場で誰かに聞くか調べるかして、しっかりと自分の中でイメージできるようにしていきましょう。知らない言葉を潰していくことは、合格のために重要な習慣だと思います。 

Wedge prewedge

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

 

 

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼ってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。「医歯薬出版の保存修復学」は網羅的に書いてありますが、写真や図が小さく文章で理解する割合がより多い印象を受けます。勉強が進んできてだいたいのことがわかってくると、こちらのほうが面白く感じてくるのですが、最初の段階では「保存修復学21」を携えて勉強したほうがよりわかりやすく学ぶことができると感じています。

編集仕方というか、ページのまとめ方や文字と写真、イラストの並べ方など「保存修復学21」のほうが読んでいて非常にわかりやすくできていると思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

 

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

臨床問題を得意になるコツは、基本的な処置や考え方などを1.にあげたような教科書の内容を一通り読んでから、あとは、臨床の処置の写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

もちろん、5,6年次の臨書実習のリアルな処置と教科書の内容を自分で紐付けることは非常に重要です。教科書は、臨書実習の具体的な処置内容をまとめてより抽象的に、学術的にまとめたものです。机上の勉強ではそれらをつかむだけなのでなんとなく体感がなくぼんやりとした理解ですが、その文章化された診断や治療内容を具体的なやり方・道具、手順などを実際の体験と紐付けることでより深い理解になります。そうすると国家試験のやったことない臨床問題でも、頭のなかでイメージして、正解に自分でたどり着けることが多くなります。

「隔壁が先か、歯間離開が先か」CR修復

今回はこの問題です。

104D-37

27歳の男性。上顎左側臼歯部の痛みを主訴として来院した。一過性の冷水痛を認める。左下5にコンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真と罹患歯質除去後の口腔内写真撮を別に示す。次に行うのはどれか。1つ選べ。

a 歯間離開
b 接着操作
c 裂溝の形成
d 隣接面の予防拡大
e マトリックスの挿入

スクリーンショット 2017 01 11 19 24 42

正答 e

 

隔壁の作る順序

歯間離開とマトリックスどちらが先か…写真Bでう蝕の除去をしているので、次はCR充填していきます。隣接面のところにも充填するので、隔壁を作らないといけません。歯間離開とマトリックスの挿入、どちらもやるはずですが、その順番はどちらが先になるでしょうか。

充填時の隔壁の手順:マトリックスが先

  1. マトリックスの挿入
  2. 歯間離開(ウェッジやリング型リテーナー)

充填時の隔壁は上記の順番になります。なぜでしょうか?実際に自分でやってみるとわかるのですが、ウェッジやリング型リテーナーは歯を強く押すことで歯と歯の間をあけます。よって、ウェッジをいれたままだと、マトリックスをいれることができません。なので、まずは、マトリックスを先に入れて、それを固定するとともに、歯間離開もするために、ウェッジやリング型リテーナーをいれます。このあたりは実際の作業をやってみると当たり前のことなのですが、机の上で問題を解いているだけだとわかりづらいです。 しかもこれらの一連の作業は非常に細かい部分なので臨床実習で見ていたとしても注意深く意識を向けていないと見逃してしまいそうなところです。

残念ながら、この類の問題を勉強するには、国家試験の過去問を解いて、1度間違い、それから教科書などをもう一度詳しく読んでいくというようなやり方でしか身につけることができないと思います。

今回は以上になります。

 

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼ってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。「医歯薬出版の保存修復学」は網羅的に書いてありますが、写真や図が小さく文章で理解する割合がより多い印象を受けます。勉強が進んできてだいたいのことがわかってくると、こちらのほうが面白く感じてくるのですが、最初の段階では「保存修復学21」を携えて勉強したほうがよりわかりやすく学ぶことができると感じています。

編集仕方というか、ページのまとめ方や文字と写真、イラストの並べ方など「保存修復学21」のほうが読んでいて非常にわかりやすくできていると思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

 

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

臨床問題を得意になるコツは、基本的な処置や考え方などを1.にあげたような教科書の内容を一通り読んでから、あとは、臨床の処置の写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

もちろん、5,6年次の臨書実習のリアルな処置と教科書の内容を自分で紐付けることは非常に重要です。教科書は、臨書実習の具体的な処置内容をまとめてより抽象的に、学術的にまとめたものです。机上の勉強ではそれらをつかむだけなのでなんとなく体感がなくぼんやりとした理解ですが、その文章化された診断や治療内容を具体的なやり方・道具、手順などを実際の体験と紐付けることでより深い理解になります。そうすると国家試験のやったことない臨床問題でも、頭のなかでイメージして、正解に自分でたどり着けることが多くなります。

知ってますか?酸素遮断剤の使い方

今日はこの問題です

108B-44

37 歳の女性。上顎左側中切歯の審美不良を主訴として来院した。オールセラミッククラウンによる補綴歯科治療を行うこととした。デュアルキュア型レジンセメン トによる装着過程の操作順の写真(別冊 No. 44A、B、C、D、E)を別に示す。 B の操作を行う際の留意点はどれか。 2 つ選べ。

a 酸素遮断剤と併用する。
b 浮き上がりに注意する。
c 光照射は単一方向から行う。
d 光照射時間は数秒以内とする。
e クラウン圧接後、数分待って照射する。

スクリーンショット 2016 12 08 11 31 52スクリーンショット 2016 12 08 11 32 03

 

正答 b,d

 

デュアルキュア型の接着性レジンセメント

この問題自体は割りと答えやすいですよね。特に臨床実習中にたくさんみる処置の一つだと思います。セメントでいま一番使われているデュアルキュア型の接着性レジンセメントで、デュアル=2つの硬化システム=光重合+化学重合をもつレジンセメントです。光が届く部分に関しては、光重合で。メタルインレーなど光が届かない場合でも化学重合で十分硬化させれるという優れものです。接着の強さも、セメント自体の強度も強く、脱離の少ない優等生と言った感じでしょうか。

さらに、素晴らしいのは「余剰セメント除去が簡単」ということでしょう。余剰セメントは除去できないと歯周炎にもつながるので、しっかりとりきらなければならず、時間のかかる作業だったのですが、これを一瞬で終わらせることができます。手技としては、

  1. 修復物内面にセメント塗布→支台歯に圧接
  2. あぶれた余剰セメントに、数秒の光照射→セメントが半硬化(タックキュア)
  3. 探針で一気にペリッと剥がせる
以上です。これは、デュアルキュア型セメントの特徴的な操作です。その後、しっかり光照射する(光重合)+時間をおく(化学重合)ことで、最終硬化が得られます。余剰セメントを最終硬化までしてしまうと除去がすごく大変になるので、その点要注意です。国試ではこの「セメントの半硬化」について主に問われていました。

 

酸素遮断剤ってなんだろう?

選択肢にある「酸素遮断剤」は知っていますか?解答には関係ないものの、今後正答肢として出題される可能性も高いです。酸素遮断剤がいつ、どこで使用されるのか、おさえておきましょう。実は、酸素遮断剤は、余剰セメント除去の後に行うべき操作なんです。写真やイラストは見たことないし、臨床実習でも見る機会が少ないと思います。酸素遮断剤は以下のようなものです。

  • 酸素に触れている接着性レジンセメントの最表層(フィニッシュラインの表面)は未重合層として残る
  • 間接法の修復物を装着後、酸素遮断剤を塗布→未重合層が完全に化学重合できる!
  • 酸素遮断剤は、酸素も遮断するが、重合開始剤も含んでおり、化学重合を積極的に促進

以下に、実際に日本で販売されている酸素遮断剤「オキシガードⅡ」という商品の説明書のイラストを紹介します。このように手技が見えるとわかりやすいですね。パナビアという接着性レジンセメントとセットで売られています。

 酸素遮断剤

グラスアイオノマー修復のバーニッシュ

似てるのかどうかわかりませんが、グラスアイオノマー修復のときに最後に塗布するバーニッシュはこの酸素遮断剤と少し似ているかもしれません。グラスアイオノマーセメントは「初期感水性」があり、完全硬化するまでの間、水分を排除しておくことが有効です。そのために充填後、バーニッシュを表面に塗ります。ワセリンを表面に塗って、水を弾くようにする、といったような感じです。「硬化が最後まで進むように塗るお薬」という意味では同じような役割ですよね。機序や物質は全くちがいますが…

レジンセメントの未重合層への対応

 以下にレジンセメント未重合層への対応をまとめておきます。大体以下の4つの方法で、未重合層を除去することが可能です。
  1. 最終硬化後の研磨
  2. サービカルマトリックス、透明ストリップスによる圧接で酸素を除去→未重合層が発生しない
  3. アルコール清拭で未重合層の除去(レジンコーティング法、シーラントなど)
  4. 酸素遮断剤の塗布(酸素ない状態で化学重合を促進させる)

歯髄の検査は奥が深い

新作
 
50歳の女性。下顎右側臼歯部のブラッシング時の疼痛を訴えて来院した。初診時の口腔内写真を別に示す。原因歯を特定するために行う検査として有効なのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2016 12 08 13 28 44
  1. 歯髄電気診
  2. 温度診
  3. 擦過診
  4. 透照診
  5. 打診
 
正答 2,3
 
 

歯髄検査の違い

歯髄検査で、温度診や歯髄電気診などありますが、それらの違いを問われています。温度診も歯髄電気診も歯髄の生死を確かめることができますが、この問題のように象牙質知覚過敏症の診断には、歯髄電気診はあまり役立ちません。過去問では歯髄の生死に関しての検査の問題が多いように思いますが、知覚過敏の診断、と比較すると意外な違いがみえてきます。この問題は「象牙質知覚過敏症の検査はどれですか?」と問うています。
 
  • 擦過診:健康歯(ー)知覚過敏(+)失活歯(ー)
  • 温度診:健康歯(+)知覚過敏(+)失活歯(ー)
  • 歯髄電気診:健康歯(+)知覚過敏(+)失活歯(ー)
 
擦過診:歯髄生死わからない
温度診:知覚過敏・歯髄生死どちらも有効
歯髄電気診:知覚過敏わからない
 
 
単純性歯髄炎では、歯髄電気診の閾値が下がり、
化膿性歯髄炎では、歯髄電気診の閾値が上がりますが、
診断できるほどの指標にはなりえず、参考値といった感じでしょうか。
 
歯肉退縮→歯根露出→象牙質知覚過敏症は高齢化の今にまさに問われやすい項目で。検査方法もしっかりと理解しておきましょう。今回は以上です。
 
 

象牙質う蝕の層

う蝕象牙質と層

今回はこの問題です。

106-A129
象牙質う蝕病巣の表層から深部への特徴で正しい組み合わせはどれか。
1つ選べ。

表層 →→→→深部

a 軟化 – 細菌侵入 – 着色
b 軟化 – 着色 – 細菌侵入
c 着色 – 細菌侵入 – 軟化
d 着色 – 軟化 – 細菌侵入
e 細菌侵入- 軟化 – 着色
f 細菌侵入 – 着色 – 軟化

正答 f

う蝕の順序は「軟化」→「着色」→「細菌侵入」

当たり前すぎるけど、この問題、よく読まないと、そしてきちんと理解していないと解けない問題です。よく理解せずに解いて、数カ月後解いてまた間違ってというのを何度か繰り返した因縁の問題です。
この問題では「歯がう蝕になっていく順序」を聞かれています。
それは「軟化」→「着色」→「細菌侵入」です。

1.
まず最初に「軟化」が起きます。これは、細菌由来の酸(H+)によって緻密な歯のヒドロキシアパタイトが溶かされていくということです。全てはこの変化から始まります。
2.
次の段階で「着色」が起きます。これは緻密な構造だったアパタイトが崩れ始め少しの隙間ができ、そこに着色物質が入り込んでいくことでおきます。まだこの段階では細菌が入っていけるような間隙はできていません。そして、着色物質は酸(H+)よりも大きく、十分に構造が破壊されてから出ないと歯質にはいっていくことができません。
起きます。
3.
そして最後に「細菌感染」です。酸によって、歯質が十分に破壊され、大きな隙間ができた時に、初めて大きな細菌が侵入していきます。細菌は着色物質よりも大きく、これが入っていけるということは、歯質の破壊の程度は大きく、ここにはう蝕検知液でさえも十分に侵入できるので、濃く染まります。保存不可能な部分と判断され、削って取り除く部分として判断されます。

 

物質と細菌のサイズ

物質と細菌のサイズ

サイズの大きさのイメージを描いておくとよいかもしれません。軟化→着色→細菌感染の順番でおきるのは単純に、物質の大きさが小さいか大きいかで順序が決まっていると考えてよいと思います。歯質の中に入っていくわけですから、小さほうが先に入っていってその症状を示すようになるのはうなずけます。(う触原性細菌はStreptococcusなどレンサ球菌が多いですが、ここではイメージしやすいような菌の姿を描いています。)

どこまで削るのか。

ついでにですが、上記の「軟化」「着色」「細菌感染」でどこまで削ればよいのかわかりますか?
また、う蝕検知液を使った場合にどこまでがどのように染まるのか理解していますか?
私は下の図のようにまとめています。

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