今日はこの問題です
108B-44
37 歳の女性。上顎左側中切歯の審美不良を主訴として来院した。オールセラミッククラウンによる補綴歯科治療を行うこととした。デュアルキュア型レジンセメン トによる装着過程の操作順の写真(別冊 No. 44A、B、C、D、E)を別に示す。 B の操作を行う際の留意点はどれか。 2 つ選べ。
a 酸素遮断剤と併用する。
b 浮き上がりに注意する。
c 光照射は単一方向から行う。
d 光照射時間は数秒以内とする。
e クラウン圧接後、数分待って照射する。
正答 b,d
デュアルキュア型の接着性レジンセメント
この問題自体は割りと答えやすいですよね。特に臨床実習中にたくさんみる処置の一つだと思います。セメントでいま一番使われているデュアルキュア型の接着性レジンセメントで、デュアル=2つの硬化システム=光重合+化学重合をもつレジンセメントです。光が届く部分に関しては、光重合で。メタルインレーなど光が届かない場合でも化学重合で十分硬化させれるという優れものです。接着の強さも、セメント自体の強度も強く、脱離の少ない優等生と言った感じでしょうか。
さらに、素晴らしいのは「余剰セメント除去が簡単」ということでしょう。余剰セメントは除去できないと歯周炎にもつながるので、しっかりとりきらなければならず、時間のかかる作業だったのですが、これを一瞬で終わらせることができます。手技としては、
- 修復物内面にセメント塗布→支台歯に圧接
- あぶれた余剰セメントに、数秒の光照射→セメントが半硬化(タックキュア)
- 探針で一気にペリッと剥がせる
酸素遮断剤ってなんだろう?
選択肢にある「酸素遮断剤」は知っていますか?解答には関係ないものの、今後正答肢として出題される可能性も高いです。酸素遮断剤がいつ、どこで使用されるのか、おさえておきましょう。実は、酸素遮断剤は、余剰セメント除去の後に行うべき操作なんです。写真やイラストは見たことないし、臨床実習でも見る機会が少ないと思います。酸素遮断剤は以下のようなものです。
- 酸素に触れている接着性レジンセメントの最表層(フィニッシュラインの表面)は未重合層として残る
- 間接法の修復物を装着後、酸素遮断剤を塗布→未重合層が完全に化学重合できる!
- 酸素遮断剤は、酸素も遮断するが、重合開始剤も含んでおり、化学重合を積極的に促進
以下に、実際に日本で販売されている酸素遮断剤「オキシガードⅡ」という商品の説明書のイラストを紹介します。このように手技が見えるとわかりやすいですね。パナビアという接着性レジンセメントとセットで売られています。
グラスアイオノマー修復のバーニッシュ
似てるのかどうかわかりませんが、グラスアイオノマー修復のときに最後に塗布するバーニッシュはこの酸素遮断剤と少し似ているかもしれません。グラスアイオノマーセメントは「初期感水性」があり、完全硬化するまでの間、水分を排除しておくことが有効です。そのために充填後、バーニッシュを表面に塗ります。ワセリンを表面に塗って、水を弾くようにする、といったような感じです。「硬化が最後まで進むように塗るお薬」という意味では同じような役割ですよね。機序や物質は全くちがいますが…
レジンセメントの未重合層への対応
- 最終硬化後の研磨
- サービカルマトリックス、透明ストリップスによる圧接で酸素を除去→未重合層が発生しない
- アルコール清拭で未重合層の除去(レジンコーティング法、シーラントなど)
- 酸素遮断剤の塗布(酸素ない状態で化学重合を促進させる)