今回は、口蓋裂や脳血管障害で麻痺が起きた場合に起きる、鼻咽腔閉鎖不全などでの発音に関する問題です。しっかり誰が教えてくれるという教科がありませんので、勉強がしずらい。けどここ数年バリバリに国試で問われています。
口蓋裂言語
口蓋裂の人は発音に異常が生じることが多いです。構音障害は大きく2つ、
- 鼻咽腔閉鎖不全に関連する構音障害
- 鼻咽腔閉鎖不全に関連が少ない構音障害
に分けられれます。それぞれどのように異常ができるのか見ていきましょう。
1.鼻咽腔閉鎖不全に関連する構音障害
まずは問題を解いてみましょう。
108A-98
鼻咽腔閉鎖不全によって /na/ に聞こえる音はどれか。 1 つ選べ。
- /da/
- /ha/
- /ka/
- /pa/
- /sa/
正答 1
鼻咽腔閉鎖不全の開鼻声の覚え方
「バーバパパがママ、だったなら」
- 「ba」「pa」→「ma」と発音される
- 「da」「ta」→「na」と発音される
上の絵は、正常なヒトの発音時の咽頭の状態を示したものです。左側の2つは、鼻咽腔を開いたまま発音するもので、右側の2つは、鼻咽腔を閉じないと発音出来ないものです。つまり、上記の矢印のような変化が、鼻咽腔閉鎖不全のヒトでは起こります。右側の発音は出来ずに、すべて、左側のような状態で発音することになります。
- 「ba」「pa」→「ma」と発音される
- 「da」「ta」→「na」と発音される
となるわけです。
鼻咽腔閉鎖不全に関連する構音障害
- 呼気鼻漏出による子音の歪み
- 声門破裂音
- 咽頭摩擦音
- 咽頭破裂音
- 喉頭摩擦音
- 喉頭破裂音
声門破裂音
例えば、上のリストの2つ目、「声門破裂音」は、口腔内圧が保てないので、構音点が喉頭まで後退してしまう現象がおきます。そうすると、口腔内圧を必要とする子音を連続では発生できずに、とぎれとぎれの母音になってしまいます。
つまり、「たなか」は「あ・な・あ」と発音するようになります。「たなか」は口腔内で破裂させるのがわかりますよね?でも「あ・な・あ」は破裂などさせずに、声門のところだけで十分発音できますよね?
/b/ や /t/ や /k/ など発音するとわかりますが、破裂音や破擦音は、どこで空気を破裂させているか?というと、「口腔内」で破裂させていますよね。鼻咽腔閉鎖不全のためにそれができずに、「喉頭」で破裂させてしまうのがこの声門破裂音です。無声破裂音(t, p ,b, dなど)・破擦音(ts, dzなど)を発生する時に、破裂・破擦部位が声門部まで後退することが多くみられます。
他の「咽頭破裂音」や「喉頭破裂音」なども同じように、構音点が後ろに下がることで起きる歪みです。
2.鼻咽腔閉鎖不全に関連が少ない構音障害
こちらの異常は、鼻咽腔は閉鎖できるが、舌の運動や口蓋の形がおかしいことで生じるものです。昔は、口蓋裂の患者さんでは手術がよくなく鼻咽腔閉鎖不全の人が多かったですが、近年は手術技術が向上し、この鼻咽腔閉鎖不全に関連が少ない構音障害が増加してきています。こちらは以下の3つがあります。
- 口蓋化構音:構音の位置が後方へ後退して発生する歪み。/t/などの歯音が/k/などの口蓋音に後退して歪みます。たたみ→かかみ
- 側音化構音:呼気が口蓋側方から出てしまって子音が歪む。舌縁と臼歯で作られる歪み音。「き・ち」→「き」、「し・ひ」→「ひ」
- 鼻咽腔構音:構音点が軟口蓋と咽頭後壁で作られて、口からではなく鼻から音が抜ける音です。n など鼻音っぽくなります。
最後に以下の問題を解いてみましょう。
新作
次のうち、鼻咽腔閉鎖不全に関連の少ない構音障害でみられるものはどれか。すべて選べ
- 鼻咽腔構音
- 声門破裂音
- 側音化構音
- 喉頭摩擦音
- 口蓋化構音
正答 1,3,5
今回は以上です。