クラブリ

「切歯路傾角」にも右と左がある!!

まずはこの問題をどうぞ!

104B-50, 51
65歳の男性。上顎前歯部の審美障害を主訴として来院した。レジン前装冠によるブリッジを製作することとした。支台歯形成後の口腔内写真と技工中の咬合器の写真とを別に示す。

104B 5051 A

104B 5051 B

104B 5051 C

104B-50
咬合器調節で舌面形態に関わるのはどれか。すべて選べ。

a 右側方顆路角
b 左側方顆路角
c 右側方切歯路角
d 左側方切歯路角
e 矢状切歯路傾斜角

104B-51
適切なポンティック基底面形態はどれか。1つ選べ。
a 離底型
b 船底型
c 偏側型
d 鞍状型
e オベイト型

正答 

104B-50:a,d,e

104B-51:c

実際には104B-50は削除になった問題です。こちらは後でじっくり解説するとして、まずは、104B-51を。

104B-51

問題文で、「審美障害」とあるので、「e オベイト」に飛びついてしまいました。問題文に「レジン前装冠」という指定があるので、ここは、迷わずcにいかなければならないところです。1問目が難しいので冷静に解いていくのが大変です。

104B-50

この問題では「左上123のブリッジの舌側面形態は何で決定されるか?」と問われています。大前提として、側方運動時に

  1. 「顎関節の形」
  2. 「歯のガイド」

の2つが主に、影響を与えることを理解しなければなりません。まずは「1.顎関節の形」です。

顎関節の形によって、下顎頭の動き方が変わる

顎関節の形で決まってくる角度を「顆路角」と呼び、運動の方向によって名前がたくさんあり、かなりややこしいです。「顆路角」についてはこちらの記事(http://www.kokushi.space/?p=541)で詳しく説明していますので、ぜひ読んでみて下さい。

Bennett angle movement

上図のように、右に顎を動かそうとすると、左側=平衡側の下顎頭が沢山動きます右側=作業側はあまり動きません。このときの左側=平衡側の内側にスライドする角度を「ベネット角」=「側方顆路角」とよびます。ちなみに作業側の下顎等の動きを「ベネット運動」と呼びます。

「矢状顆路角」には「前方」と「側方=右と左」の2つがある!

左への側方の顎の運動で、下顎頭は上下にもスライドします。下顎頭が関節結節に誘導されて動きますからね。この時の下顎頭の下方にスライドする角度を「矢状側方顆路角」といいます。

Bennett angle movement 2

前方運動のときも同じように、下方にスライドしますが、この時の角度は「矢状(前方)顆路角」と呼びます。前に動くときと横に動く時では、下方へのスライドの角度に差があって、普通は側方に動かした方が前方運動時より下にさがります。この(側方運動の時のスライド角度)から(前方運動の時のスライド角度)を引いた角度を「フィッシャー角」と呼びます。矢状顆路角に2種類あるということが重要なポイントです。

顎を左に動かすと、、、

今回の問題の場合は、顎を左に動かしたときに、下顎の歯が、上顎の前歯ブリッジ(⊥123)と当たります。右に動かしたときは、上顎前歯ブリッジ(⊥123)に接触しません(平衡側なので)。よって、顎を左に動かした時に、関係するのは右側の顎関節の移動する角度です。つまり「a 右側方顆路角」です。

Incisal path angle

引き続き「2.歯のガイド」についても考えてみましょう。

「切歯路角」にも「先方」と「側方=右と左」の2つがある!

顎を左に動かした時、右側の顎関節でも運動が影響受けますが、もう一つ、歯どうしがスライドするので、その部分でも運動が影響を受けます。これを「歯のガイド=誘導」といいます。理想的な天然歯列では、左側に顎を動かすと、左側の下顎犬歯が上顎犬歯の舌側面をすべって、歯が離開していきます。これが「犬歯誘導」です。今回は義歯ではなくブリッジなので、フルバランスドオクルージョン(平衡側とかもガイドが発生する)ではなく、「犬歯のみの誘導」や「グループファンクション=作業側の複数歯のガイド」を目指します。

前方運動では、おもに切歯がガイドして、顎の運動を決めていきます。このときは前歯の舌側面の角度でスライドしていくので、この角度を「矢状切歯路角」と呼びます。

側方運動でも、切歯や犬歯にガイドされますが、この時、上図のように、「左側方運動」で左側=作業側の前歯でガイドされるときの切歯路角は「左側方切歯路角」といいます。顎の運動は左なのに、「顆路角」では「右側方顆路角」で、「切歯路角」では「左側方切歯路角」で逆になるんです。うーん、むずかしい!

ということで、問題に戻りますが、「左側方運動で影響があるのは?」という問いなので、

  1. 右側方顆路角
  2. 左側方切歯路角
  3. 矢状切歯路角

が正答になります。「顆路角」と「切歯路角」で左右が逆に生ることをしっかりとつかんでおきましょう。

Incisal path angle

今回は以上です。

おすすめのクラブリの教科書

冠橋義歯補綴学テキスト 會田雅啓 ★★★

教科書系ではこちらの本が、一番です。写真も多いですし、説明が、医歯薬出版のクラウン・ブリッジ補綴学よりも丁寧です。初めてクラウン・ブリッジを学ぶ人、苦手でよくわらないなーというひとはまずはこちらの本を読んでみてください。イメージ湧きやすく、おすすめです!この本を教科書に使っている大学もあります。

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↑冠橋義歯補綴学テキスト 永末書店 より

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↑冠橋義歯補綴学テキスト 永末書店 より

目で見る咬合の基礎知識 2002月刊歯科技工別冊 ★★★

この本もすごいです。咬合様式、犬歯誘導やグループファンクション、フルバランスドオクルージョン、リンがライズドオクルージョンなどかなりイラストでわかりやすく説明されています。咬合のややこしいところ、教科書で文章でしか説明されていない部分がことごとく大きな図やイラストで解説されています!技工士用の解説なので、専門的に深いところも優しい表現でわかりやすくかかれています。

クラウンブリッジの臨床原著第4版 ★★★★

補綴科の先生はみんなこの本をもっていますよね。アメリカの歯学部、いや英語で歯学を学んでいる学生が、必ず買っている教科書です。英語版はもう6版とかだいぶ進んでいるので、英語が読める人はそちらを買うほうがよいですが、まずは日本語で。高いですが、疑問に思うことなど片っ端から書いてあって、読むと解決すること多かったです。学生にはオーバースペックかな、と思いましたが、思い切って買ってしまいました。結果、基本的な部分の理解が深まって良かったと思います。このあたりの知識は、将来に渡ってつかっていく知識なので、先行投資と考えれば全然ありなんじゃないかと。

クラウンブリッジ補綴学  医歯薬出版社 ★★☆

国家試験のスタンダードといえば、王者、医歯薬出版株式会社のシリーズです。110〜112回を受けられる方は、クラブリの教科書、1つ古い第四版を購入していると思います。実はクラブリの教科書は2014年に第五版が新しく出版されています。

今回の改訂で結構、重要な改訂があったので、興味あるかたはこちらの記事もよんでみてください。http://www.kokushi.space/?p=1010

必ず目を通すべき!新しい版の教科書「クラブリ」

国家試験は医歯薬出版からでる

国家試験のスタンダードといえば、王者、医歯薬出版株式会社のシリーズです。110〜112回を受けられる方は、クラブリの教科書、1つ古い第四版を購入していると思います。実はクラブリの教科書は2014年に第五版が新しく出版されています。

今回の改訂で結構、重要な部分があって、読んでいて驚いたので、そこを少しだけご紹介します。前回の第三版→第四版の改訂のとき、新しく第四版に載った内容が国家試験に出題されて購入していない人たちが痛い目をみた、ということも聞いているので、やはり確実に合格射止めたい人はクラブリだけは最新版を購入することをオススメします。

今回紹介するのはほんの一部ですので、是非とも図書館や後輩に借りるか、自分で購入して、一通り自分の目でみることをオススメします。

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クラウンブリッジ補綴学 第五版 矢谷博文ほか 2014 医歯薬出版社 より

「ハイブリッド型コンポジットレジン」の接触点はレジン?金属?

上の図は、ハイブリッド型コンポジットレジン前装冠の隣接接触点についての説明図です。

  • レジン前装冠→接触点は金属
  • 陶材焼付鋳造冠→接触点は陶材

というのは常識ですが、では「ハイブリッド型レジン」はどうなるか?はご存知でしょうか?なんと陶材と同様に接触点はハイブリッド型レジンで覆うことになっています!

  • ハイブリッド型レジン前装冠→接触点はハイブリッド型レジン

シリカを80-90%ぐらいの勢いて含むハイブリッド型コンポジットレジンはかなり硬く、物性も陶材に近づけているということなんだと思います。こういうところスパッと出題されたら間違ってしまいそうで、恐ろしいです。王道中の王道の書籍にイラスト付きでこんなにもわかりやすく掲載されてしまっているので、出ても全然おかしくないです!やはり新しい教科書は買って、一通り自分の眼で通してみることは重要だと思います。勉強の合間とかふとした時にパラっとみれるのがよいですよね。

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クラウンブリッジ補綴学 第五版 矢谷博文ほか 2014 医歯薬出版社 より

3D、CAD/CAM関連は写真をきちんとチェックしておきたい

あとは最新の技術系ところ、CAD/CAM関連の写真は、必ず目を通しておいたほうがよいです。この部分は今回特に追加された資料や文章が多かったところです。例えば、上にある「光造形で制作された模型」など写真でぽんとだされて、次に行うのは?とかこの模型の性質は?とか聞かれたりするわけです。ただでさえ緊張しているところに知らない画像で頭真っ白になる可能性も十分にあるので、一度、王道の教科書に乗っている写真と文章は読んでおいたほうがよいですよね。

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クラウンブリッジ補綴学 第五版 矢谷博文ほか 2014 医歯薬出版社 より

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クラウンブリッジ補綴学 第五版 矢谷博文ほか 2014 医歯薬出版社 より

FGPテクニック

個人的に嬉しいのがFGPテクニックについてコラムで、コンパクトにまとまっていることです。たまに問題に出てくるFGPテクニック、調べてもでてこなくて、わからないまま過ごしていましたが、今回、かなりきちんと理解できました。FGPテクニックは英語でFunctionally Generated Pathテクニックといいますが、要は咬合調整時に中心咬合位だけでなく、偏心位の模型も作っておいて、それで精度高いワックスアップをするための方法です。きちんとコラムで解説してくれているので、是非こちらも読んでみて下さい。

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クラウンブリッジ補綴学 第五版 矢谷博文ほか 2014 医歯薬出版社 より

シェード関連の機材が多め

印象的だったのはシェードテイキング、色合わせのための写真や文章が結構追加されていたことでした。上のeye-specialのカメラなどは臨床実習などで見たことがある人多いのではないでしょうか?歯肉の赤色を消すだけで、あんなに歯の色の違いがみやすくなるなんてほんとすごいですよねー。あるいは、自然光でやるとされていたシェードテイキングにも専用の色温度で照らすことができる専用光源がでてきたりで。臨床実地問題は特に補綴系、ネタが枯渇している状態が続いているので、この辺の新しい機材からの出題というのは本当に確率高いと思います。少し見て、ちょっと読んで―「へ〜」って思うだけで全然違うと思いますので、一度は絶対みておきましょう!

今回紹介したのは本当に一部です。他にも、新しく保険導入されたCAD/CAM冠や、セラミック関連の記述もかなり豊富になっています。

特にクラブリのこの教科書は僕らがもっているはずの第四版からの変更点が大きかったように思います。是非とも手元で確認してみてください。

購入は以下のアイコンから飛ぶことができます。

その他、おすすめのクラブリの教科書

クラウンブリッジ補綴学  医歯薬出版社 ★★☆

国家試験のスタンダードといえば、王者、医歯薬出版株式会社のシリーズです。110〜112回を受けられる方は、クラブリの教科書、1つ古い第四版を購入していると思います。実はクラブリの教科書は2014年に第五版が新しく出版されています。

今回の改訂で結構、重要な改訂があったので、興味あるかたはこちらの記事もよんでみてください。http://www.kokushi.space/?p=1010

冠橋義歯補綴学テキスト 會田雅啓 ★★★

教科書系ではこちらの本が、一番です。写真も多いですし、説明が、医歯薬出版のクラウン・ブリッジ補綴学よりも丁寧です。初めてクラウン・ブリッジを学ぶ人、苦手でよくわらないなーというひとはまずはこちらの本を読んでみてください。イメージ湧きやすく、おすすめです!この本を教科書に使っている大学もあります。

目で見る咬合の基礎知識 2002月刊歯科技工別冊 ★★★

この本もすごいです。咬合様式、犬歯誘導やグループファンクション、フルバランスドオクルージョン、リンがライズドオクルージョンなどかなりイラストでわかりやすく説明されています。技工士用の解説なので、専門的に深いところも優しい表現でわかりやすくかかれています。

クラウンブリッジの臨床原著第4版 ★★★★★

補綴科の先生はみんなもっていますよね。アメリカの歯学部、いや英語で歯学を学んでいる学生がかならず買う教科書です。英語版はもう6版とかだいぶ進んでいるので、英語が読める人はそちらを買うほうがよいですが、まずは日本語で。高いですが、疑問に思うことなど片っ端から書いてあって、読むと解決すること多かったです。学生にはオーバースペックかな、と思いましたが、思い切って買ってしまいました。結果良かったと思います。将来に渡ってつかっていく知識なので、先行投資と考えれば全然ありなんじゃないかと。

オープントレー法がかんたんに覚えられる動画!

今回はこの問題です。

109B-5

スクリーンショット 2016 10 19 1 51 49

スクリーンショット 2016 10 19 1 52 11

正答 a

オープントレー法はイメージしにくい

インプラントはなんといっても印象法が独特です。特にもっとも精密に模型がつくれるオープントレー法 open tray impression は手順が複雑でなかなか教科書の写真と文章だけだとイメージがわきません。今回は動画をみて、クローズドトレー法 closed tray impression とオープントレー法の違いを頭でイメージできるようにしましょう。youtubeで20本ぐらいopen tray法の動画みましたが、その中で特にわかりやすかった4本を紹介します。

実際の臨床操作です。

  1. 印象用コーピングを口腔内のインプラント体にネジで固定
  2. パターンレジン+金属棒で2本を連結(よりタイトに動かないように)
  3. トレー試適(トレーに穴を開ける=オープントレー法の所以)
  4. シリコン印象剤を口腔内→トレー圧接
  5. 印象採得中にトレーから突き出た印象用コーピングのネジを外す=口腔内のインプラント体とコーピングが離れた!
  6. トレーを撤去(印象用コーピングも一緒にとれる)
  7. ヒーリングアバットメントを口腔内に。
  8. 「石膏に埋める用のインプラント体=インプラントアナログ」と「コーピング」とネジで固定
  9. ガム模型用のレジンを流す
  10. 石膏を流す
  11. 作業模型完成!!

(この動画では、8のインプラントアナログの固定まで)

CGです! オープントレー法(6分00秒ごろから!)

前半はクローズドトレー法を、後半にオープントレー法(6分00秒〜)を行っています。CGですごくわかりやすいです。印象採得中のトレイからコーピングを外す動作が無いのが残念!その他はガム模型→石膏流すところまで一連の流れが見れるのでかなりイメージ付きやすいと思います。

以下の2つも実際の臨床動画です。短めなので、他のも見て、次の操作を予想しながらみてみましょう。身につきます。

今回は以上です。

半調節性咬合器

半調節性咬合器で調整できるものは、何でしょうか?
矢状顆路角と平衡側の側方顆路角ですね。
さて、本当にベーシックな話なのですが、実際にどのように調整していくかイメージができますか?
今回はここのお話です。

 

 

ベネット角とベネット運動の違いをいえますか?

まずは、基本から。下図は、スラスラとイメージできるようになる必要があります。
側方運動でたくさん動くのは作業側よりも、平衡側の下顎頭=顆頭です。
側方運動時に前下内方に動きますが、その内側に動く角度は平均的に15°で、これを「ベネット角」といいます。

「ベネット角」には別名があって「側方顆路角」ともよびます。「顆」=「下顎頭」でそれの通る「道=路」なので「顆路」です。「側方」つまり「左右方向」に関してスライドしていくときの角度なので、「側方顆路角」です。下顎を真横から見た時の動きでは「矢状顆路角」もあって、これは上下方向にスライドするときの角度を示します。

ちなみに、側方運動時、作業側では、あまり下顎頭は動きません。真横にちょこっと動くだけです。
この運動を「ベネット運動」と呼びます。小さい円錐形の範囲で動くのが教科書とかにのっているかと思います。

また、平衡側で内側に動くとき、動き始めの最初の方は真横に動きます。(関節内の空洞があるので)
やがて組織にぶつかり、15°ぐらい(=ベネット角)で滑っていきます。
前者を、イミディエイトサイドシフト
後者を、プログレッシブサイドシフト
と呼びます。

ベネット運動、ベネット角

 

 

フィシャー角とは

下図を御覧ください。
前方運動した時に、顎関節の前方の斜面(関節結節)を滑って斜め下に下顎頭が動きますが、
この角度を「矢状(前方)顆路角」といいます。
また、側方運動した時にも沢山うごく平衡側の下顎頭も同じように斜め下に動きます。
この角度を「矢状(側方)顆路角」といいます。
そしてこのふたつを比べたときには、側方運動時の方が急傾斜で滑っていきます。
この2つの角の差をフィッシャー角といい、一般的には5°ぐらいであるとされています。

 

半調節性咬合器で調節できるもの

さて、やっとここからが本番です。
半調節性咬合器で調節できるものと、実際どこらへんをいじっていくのかを下の図にまとめました。
基本的には、

  • 矢状顆路傾斜
  • 平衡側の側方顆路角(ベネット角)

が調整できます。

下図は、顆路の調節をするとき、咬合器のどこをいじるのか、をまとめているのですが、
この場面に至るその前に、上下顎とも模型を中心咬合位で付着が完了している必要があります。
すなわち、フェイスボウで上顎を3次元的に正しい位置に付着してから、
中心咬合位のチェックバイト(いわゆるバイト)を噛ませて下顎を付着します。

半調節性咬合器_2

 

顆路の調整をしていきます。
前噛みの状態でとった、前方チェックバイトを模型に噛ませて、
ピッタリあうところまで、上の図の青色の矢印の矢状顆路角を調節して、あったところで固定します。
次に、側方チェックバイトを噛ませて、ピンク色の平衡側の側方顆路角(ベネット角)を調整します。

実際の顎の動きをイメージしてみましょう。

患者さんが下顎を前に動かした時、下顎頭は関節窩の形にそって滑って動きます。
その最終地点の状態を、前方チェックバイトで記録し、咬合器上で再現しているので、
前方運動はほぼほぼ患者さんと同じ動きができるようになっているはずです。
(本当は曲線的に動きますが、半調節性咬合器では直線的な動きまでしか再現できません。)

また、側方運動も、同様です。より動く平衡側の方の内側への動きを、
患者さんの側方運動の最終地点の記録から、模型上に再現したので、
ほぼほぼ同じようなベネット角で側方に動くようになっています。

半調節咬合器では再現できないもの

半調節咬合器では、作業側の動きは、再現できません。
とても小さい動きなので無視しても構わないということだと思います。
また、フィッシャー角も再現できません。
すなわち、本来であれば、側方に動くときの矢状側方顆路角は
前方の時よりも5°ぐらい大きいはずですが、これが、再現できず、
前方運動の時の同じ角度で矢状方向の動きをします。

 

 

咬合器の使い方がわかりやすく書かれている本

全部床義歯の教科書のような参考書なのですが、
「図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで」がわかりやすいです。
図説、と謳っているだけであって、イラストや写真をふんだんにつかって、
文章だけでイメージしづらいところを、一瞬でわかるように書かれています。
咬合器専門の本も何冊か開いてみましたが、ちょっと専門的すぎてとっつきずらかったです。
この本は基本、全部床義歯の話がのっているのですが、咬合器についてシンプルな説明でよいです。

たとえば、この他に調節可能な、切歯指導板、の調整の仕方などかなりわかりやすいイラストで説明されています。

咬合器の調整図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで
山県 健佑 (著), 黒岩 昭弘 (著) 学建書院 (2004/05)  より抜粋

あとは、パラトグラムとかも全部の音に対して、口の中の状態どうなってるのかとか、イラスト書かれてて感動しました。

パラトグラム

図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで
山県 健佑 (著), 黒岩 昭弘 (著) 学建書院 (2004/05)  より抜粋

他にも顎堤の吸収と口頭傾斜角の選択方法とか、まじ感動しました。

顎堤と咬頭傾斜角

図説無歯顎補綴学―理論から装着後の問題解決まで
山県 健佑 (著), 黒岩 昭弘 (著) 学建書院 (2004/05)  より抜粋

いろいろみましたが、これほど端的でわかりやすく、体系的に語られている本はなかったです。
おすすめです。
補綴系はボクらの時代、昔に比べて、実習の時間が極端に削られていることもあって、
実際に体験したことないことを、教科書読んだりや写真みて、想像で解いていかなければいけないです。
イメージ力がないと問題に対応できない感じなってきています。

なので文章だけから実際の現象をイメージするのが苦手な人にはすごい良いと思います。
有床が苦手に感じている人もまず、この本ペラペラとめくってみるだけでも、
ああそういうことなのか!とガッテンが行く部分沢山あると思います。
医歯薬出版の教科書と、テクニック、それぞれFDとPD、計4冊すでにかっているとは思いますが、
それでもイメージが及ばない部分がたくさんあると思います。
まずは図書館にあると思うので、ぜひ見てみて下さい!
一つでもためになりそうなイラストがあれば、その本はもう買うべきです。

 

接着性ブリッジと歯周組織

今回はこの問題です。

109A-100
製作した補綴装置の写真を別に示す。
前装冠ブリッジと比較した本装置の利点はどれか。2つ選べ

スクリーンショット 2016-07-01 5.48.31

a 審美性に優れる
b 適用範囲が広い
c 歯質削除料が少ない
d 動揺した支台歯に適する
e 歯周組織への影響が少ない。

正答 c,e

 

接着性ブリッジに関する問題が最近の国家試験ですごく増えています。舌側にしか形成しないので、審美性がよい!に引っかかって、間違ってしまいました。たしかに、接合部分、金属が見えていて、それほど審美性がよいとは言えません。
審美性以上に、接着性ブリッジは歯周組織への悪影響が少ないことが利点としてあげられます。でも、接着性ブリッジと歯周組織はどんなふうにつながっているか説明できるでしょうか。

 

 

接着性ブリッジのマージン

接着性ブリッジとマージン

接着性ブリッジとマージン

接着性ブリッジのマージン位置はどこに設定するでしょうか。
歯肉縁上です。
それにはいくつか理由があります。
上図のように、接着性ブリッジの支台装置の形成はエナメル質内にとどまります。しかし、金属の強度的に、エナメル質の厚さ分では足りず、咬合力で割れてしまうので、金属を元あったエナメル質よりも厚めに作る必要があります。
これは、オーバーカントゥアーとなり、アンダーカットより下のところに食物が停滞しやすく歯周組織にはあまり良くありません。よって、その害を小さくするためにできるだけ歯肉縁上にマージンを設定することになります。

 

全部金属冠(FMC)や前装冠のマージン

FMCや前装冠のマージンは唇側面にも及ぶため、歯肉縁下に設定することが多いです。特に前装冠なんて、前歯部ですから、歯頸部の中途半端なところにマージンがあると、すごくカッコ悪いです。なんとかマージン位置は歯肉縁下に隠しておきたいですね。
ただ、歯周組織への影響はもちろん、縁下マージンの方が悪いです。