麻酔

簡単な表を書こう!「ショック時等の循環動態」

テスト中にさっと描けるイラストで複雑な暗記物を簡単にやっつけることができるようになります。まずは以下の問題を解いて下さい。

104C-105
発症時に血圧が低下するのはどれか。2つ選べ。

a 過換気症候群
b 血管迷走神経反射
c アドレナリン過敏症
d メトヘモグロビン血症
e アナフィラキシーショック

正答 b, e

細かすぎて覚えられない表

これ系の問題を解く時にいつもつかうのが、以下のような表です。全身麻酔時の「血圧が上がる時・下がる時」「脈が早くなる時・遅くなる時」の組み合わせで患者がどんな状態かをまとめたものです。これを覚えていれば、上の問題、すぐ解けるのですが、何せ項目が多すぎて覚えてもすぐ忘れてしまいます。

そこで今回はこの図を削ぎ落として、テスト中でも問題用紙の余白にさっとかけて、覚えやすいようなシンプルな表をご紹介します。ショック時の循環動態 03

右上は「アナ」、右下は「迷」

スクリーンショット 2016 12 29 1 09 19

1.まず、四角を書きます。

スクリーンショット 2016 12 29 1 07 47

2.次に4分割します。この時、上と左だけちょっとはみ出しておくのがポイントです。

スクリーンショット 2016 12 29 1 07 57

3.上に血圧の「圧」、左に脈拍数・心拍数の「脈」をかきます スクリーンショット 2016 12 29 1 08 21

4,右側の列には「アナフィラキシーショック」の「アナ」、下には「迷走神経反射」の「迷」を書きます。

スクリーンショット 2016 12 29 1 08 37

5.最後に、左の列には、下記の図のように書きます。スクリーンショット 2016 12 29 1 09 19

これで完成です。

右側の列は「血圧が下がる」系のもの

血圧が下がる時=ショックの状態では、殆どの場合、血を脳に回すのに必死で脈拍数が早くなります。ただ、血管迷走神経反射だけは、血圧も下がるにに、脈も落ちてしまうので、これだけは、右下になります。

右上のマスには、アナフィラキシーショックの他にも

  • 出血性ショック
  • 心原性ショック(心筋梗塞)
  • 敗血症性ショック

などほとんどのショック状態が入っていきます。

右下のマスは、副交感神経が亢進している時や、出血しすぎて死にそうな時などです。歯科の国家試験の過去問を見る限りでは上記の表にあるように、迷走神経反射を覚えておくだけで、大丈夫です。現在最新の109回まで、これ系の問題はほぼ全て対応することができます。

左側の列は「血圧が上がる」系のもの

左上のマスは、4マスの中でも一番多くの項目が入るマスです。「血圧も心拍数も上がる状態」というのは、簡単に言うと「身体がしんどいときです」。麻酔が浅くて、痛かったり、酸素が吸え無い時、逆に過呼吸で酸素がありすぎるときなど、つらそうな感じのものがここに入ります。

左下のマスは、一つしかありません。これは頭蓋内圧が亢進したときです。脳に腫瘍ができたり、外傷で血腫ができたりした時、頭蓋骨に閉鎖された空間で脳が大きくなるので、脳にかかる圧力がすごく高くなります。脳を守るために心拍数を下げます。すごく特殊な病態で、血圧↑、心拍↓は一つだけなので、これは決め打ちで覚えておきましょう。

ショック時等の循環動態

さて、実際に次の問題で使えるかどうか試してみましょう。

97D-16
血管迷走神経反射の症状はどれか?1つ選べ。

a 頻脈
b 小脈
c 顔面紅潮
d 呼吸促迫
e 四肢強直

正答 b

今回は以上です。

口腔外科お薦めの参考書

「口腔外科学」 第3版 医歯薬出版株式会社 ★★★

値段が高いので、教科書に指定されている大学は少ないかもしれません。でも国試の勉強、これからの人は絶対に早めに買って、これを常に読みながら勉強することを強くオススメします。全然、勉強のスピードが違ってきます。写真や図が多く、細かい臨床的なことも書いてあるので、それぞれの項目、イメージがつきやすいです。

全部読む必要はありません。辞書的に使うのです。いままで問題等を間違って調べ物をする時に、載っていなかったということが少ないです。何より、わからないとき一瞬で疑問が解決するということは、時間ない今には本当に貴重です。あれこれウェブを検索して、結局違ってたりということも多いので、一冊はエビデンスの確かな本を持って多くと心強いです。

一度、図書館で借りて口外の過去問週を解いて勉強してみるとよいかもしれません。

吸入麻酔の導入の速さ「心拍出量」「肺胞換気量」

general anesthetic

吸入麻酔の導入の速さについて、イメージしづらく、
ちょっとややこしいので、なかなか知識が定着しません。
今回は、この問題です。

 

101B-74

吸入麻酔で導入時間が短くなるのはどれか。1つ選べ。

  1. 心拍数の増加
  2. 心拍出量の増加
  3. 収縮期血圧の上昇
  4. 肺胞換気量の増加
  5. 機能的残気量の増加

 

正答 4

 

 

まずは消せる選択肢

4.血圧は関係ないのでまず消せます。
5.機能的残気量も、呼吸に使ってない余りスペースなので、
それが増えたら、麻酔ガスが効率的に脳に届かなくなり、これも消せます。

悩む選択肢

「1,2の循環系の増加」と「4.肺胞換気量の増加」、
どちらも、脳に麻酔ガスが早く、たくさん届きそうな気もするし、
早く脳から麻酔ガス成分がいなくなってしまう気もするし、
ちょっと迷ってしまします。
まーでも、1つ選べなら、「4.肺胞換気量の増加」しかないので、
選べますが、全て選べで聞かれることになる可能性ありますから、
ここはきちんと理解しておきたいところです。

general anesthetic

吸入麻酔とは

吸入を開始したとき、最初の麻酔ガス分圧は

肺胞内 > 動脈血 > 脳

の順になっている。上記のイラストのように、ガスが通る順に高くなっていることがわかる。通っていく間にどんどんガスがなくなっていって薄くなっていくので、当然のことだろう。

そして、しばらく時間が経つと平衡状態になり、それで吸入麻酔が効いている状態になる。
吸入ガス麻酔の本質は、

「脳へ麻酔ガスをどれだけ届け続けられているか」

ということになる。

ここで、「肺胞換気量の増加」「心拍出量の増加」がなぜ違いが出てくるのかすごく疑問に思う。
どちらも高まれば脳へのガス濃度が増えるように思えるからだ。

「肺胞換気量の増加」→ガスがたくさん入ってくるので、脳にもたくさんガスがいって導入早い:正解

「心拍出量の増加」→血流が多いので、脳にたくさんガスが届けれられて、導入早い?:間違い

心拍出量の増加のときに麻酔ガス濃度がどんな変化を示すのか、が知りたいですね。

cardiac output

心拍出量の生理を知ることが重要

心拍出量の増減と、肺胞換気量の増減は、意味合いが違ってくる。
次の大原則をしっかりと刻みこむことが必要だ。

「脳への血流量は、どの臓器よりも優先して一定に保たれている。」

だから、心拍出量が増えた時には、脳以外の臓器、筋肉や他の組織への血流量が増えるということを意味する。

よって、その時、麻酔ガスが脳以外にもいってしまうことを考えると、導入の速度は遅くなることがわかる。
逆に、心拍出量が減った場合、脳への血流量は何としても一定に保つため、
筋肉などの血流量を減らしていく。相対的に、脳への血流の配分が増えるので、
麻酔ガスがより多く脳へ届く状態になる。
「肺胞換気量の増加」→ガスがたくさん入ってくるので、脳にもたくさんガスがいって導入早い:正解

「心拍出量の増加」→血流が多いので、脳にたくさんガスが届けれられて、導入早い?:間違い

「心拍出量の増加」→脳より全身系の血流量が増えるので、脳へのガス量が減り、導入遅い:正解

 

注意しなくてないけないのは、
心拍出量 ≒ 肺血流量ということだ。
肺胞換気量と肺血流量の意味するところが逆になっているので、これはかなりややこしい。

 

肺胞換気量は絶対重要

肺胞換気量は麻酔ガスの生体への入り口なので、
増えれば増えるほど、体内にガスが供給されることになる。
麻酔ガス濃度が増えても、生体に入ってくる量が増えるので、
導入速度は速くなることがわかる。

 

ガス麻酔薬と静脈麻酔薬の違い

今回は以上です。

MAC値のゴロ

MAC値のゴロをまとめました。

ハロタン:0.75%
ハロー!タンポン、オナゴの日
笑気:105%
東郷は笑わない
セボフルラン:1.71%
お歳暮は、フルラン、以内
イソフルラン:1.15%
磯野カツオはいい子
デスフルラン:6%
無理です

輸液について、と、勉強の話

「生理食塩水だけ輸液しているとアシドーシスになってしまうんですよ」

今回の問題作成委員、麻酔科では輸液が好きな先生がいるそうです。
歯科なので、輸液、全く馴染みがなく、射程圏外なんですが、
昨今の歯科国試の医科領域への浸潤傾向を鑑みるに少し恐くもあり、
一度きちんと押さえておこうと、うちでもまとまった授業してくれました。

講義で輸液の体系的な話をしている途中にぼそっと、
「生理食塩水だけ輸液しているとアシドーシスになってしまうんですよ」
と説明が入ったんです。どういうことなのか、よく理解できず、
講義後に質問しにいくもはぐらかされ、、、しかも

教授「アシドーシス防ぐために一緒に、乳酸のリンゲル液とかいれるんだよ」
私「え?アシドーシスなのにさらに酸性の乳酸いれるんすか?何ですか?」
教授「うーん」

医科の人なら、余裕で心得ている話のはずですが、
恥ずかしながら全然わからずに、モヤモヤしていたところ、、、

下の記事を読んで合点が行きました。
http://ameblo.jp/fentanist/entry-11752378619.html

以下、要点をまとめていきますね。

生理食塩水には重炭酸イオン入ってないので、どんどん薄まっていく

生食を大量に投与すると、重炭酸イオン(HCO3-)が薄まってしまいます。
重炭酸イオン濃度が低下することになるので、代謝性アシドーシスです。

確かに、生理食塩水だけだと、生体内の電解質のバランス崩れて、重炭酸イオン薄まっていきますよね。
この状況を示すのに「希釈性アシドーシス」という言葉もあるようです。なるほど。
しかし、、、
これを防ぐために乳酸のリンゲル液を加える。
アシドーシスを治したいのに、酸性の液体をいれるの?なぜに?
ちなみに「リンゲル=生食+K+Ca」で、NaCl以外の主要な生体の電解質をいい濃度で含んでいるやつです。

 

乳酸リンゲルがどうしてアシドーシスから救うのか

乳酸リンゲルが、なぜアシドーシス防げるかというと、生体内(肝臓)で代謝されて、重炭酸イオンができるから。

すごく、かいつまむと、乳酸(C3H6O3)は代謝されて、CO2とH2Oになる。
生食が沢山いれられている状態だと、HCO3-が足りない状態なので、

CO2 + H2O ⇔ HCO3-+ H+

の平衡式で右向きへの反応がふえるので、重炭酸イオンがゲットできる。
ということみたいです。

本当は重炭酸イオンリンゲル作りたかったけど、昔は難しすぎた

僕としては、話し聞いた時には、
「生食で重炭酸イオン薄まるんだったら、最初から重炭酸イオンのリンゲルを生食と一緒にいれればいいじゃん」
って思ったんですが、なんで乳酸の代謝なんて使う回りくどいやり方するのか。。。

単純に、重炭酸イオンの水溶液、安定したものを作るのが難しかったみたいです。
確かにどんどん重炭酸イオンから、二酸化炭素でてきてしまって、安定しなさそうです。
ということでしかたなたく、乳酸リンゲルとか、酢酸リンゲルとか、
有機酸を投入して、重炭酸イオンを得るという回りくどいやり方をしていたみたいです。

世界初の重炭酸イオンリンゲルは日本製

「ビカーボン」なんか聞いたことある。
口腔外科の手術に入った時、輸液の名前、必死にメモした記憶がある。
これ日本で開発されたらしいですよ。
難しいとされていた、重炭酸イオンを含むリンゲル液の開発に成功したのは日本でした。
すごいですねー。
値段も高いらしく、まだ安い乳酸や酢酸のリンゲルもよく使われているようです。

 

自分の感じた「なぜ」を追いかけていくことが、勉強の本質

今回の話は、多分歯科の国家試験に出題されないと思います。
まー、国試前の勉強では、どうでも良い知識といいますか。
でも、こういう話、僕は大好きです。
論理というか、筋が通っていて、ピースがきちんとハマるようで、単純に気持ちいいです。
ああ、なるほど、だから、そうなっているんだと。
こういう順路で理解すると、暗記せずとも覚えてしまうというか、
自然と、身体に血肉化されていきますよね。
私は基本的には、これまでの勉強は上記のような姿勢でやってきています。
うまくまとめられているテキストをとにかく覚える、みたいなことは勉強じゃねー!とさえ思っています。
自然に、そこに提示されているお話を追っかけて、理解しようと、筋道を考えていったら、
それなりの知識は自然と覚えている状態になるはずです。
定着も深いものになります。

その日に「どれだけ勉強をしたか」は何で測れるか。

私はその日に、どれだけ勉強したかを測るのは、
解いた問題集のページ集でも、読んだ参考書の数でも、机に向かった時間でも、覚えた項目の数でもなく、
「自ら出てきた疑問」と「考え、調べ、見出した答え」がどれだけあったか、が、勉強の量を示すものだと思います。
その場で答えがでない場合もあるので、本質的にはやはり、
「なぜこうなんだろう?」という疑問の数が、
勉強がきちんとできている指標として妥当なものであると考えています。

受験の直前の勉強ではこのようなスタイルは、向いてないかもしれません。
受験は関係なしに、生涯続けていく「勉強」というものがあるのなら、
このような姿勢がすごく本質的というか重要な気がしています。
国家試験でフルにこのモードで回せないのが、不毛な感じが強いのも事実です。

ちなみに、今回はネット上の情報だけで終わらせてしまっていますが、
本業の領域であれば、やはり正書も読んで体系的な部分も、一度頭を通過させてくとよりよいと思います。

笑気と静脈内鎮静法の禁忌、ゴロ

 

笑気の禁忌
「前期の中間、範囲は鼻下点(笑)」

  • 喘息(舌鼓沈下ではなく、気道収縮!)【←笑気による刺激誘発性から禁忌】
  • 気胸【←閉鎖腔から禁忌】
  • 中耳炎【←閉鎖腔から禁忌】
  • 鼻閉
  • 過換気症候群【←笑気による刺激誘発性から禁忌】
  • てんかん【←笑気による刺激誘発性から禁忌】

 

静脈内鎮静法の禁忌
「無力で顎ない肥満児が、緑の上で静かに眠ってる」

  • 重症筋無力症
  • 小下顎(←舌根沈下)
  • 著しい肥満(←舌根沈下)
  • 緑内障
  • 睡眠時無呼吸症候群(←舌根沈下)

どちらも禁忌

  • 妊婦
  • 精神発達遅滞