保存

「一過性の冷水痛」か「間欠性の自発痛」か、それが重要

今回はこの問題です

101C-4
28歳の男性。下顎右側第一大臼歯の疼痛を主訴として来院した。3年前に治療を受けたが,数日前から30分ほどの自発痛が間欠的に起こるという。電気診で閾値が低下している。初診時の口腔内写真とエックス線写真とを別に示す。
軟化象牙質除去後の処置で適切なのはどれか。1つ選べ。

スクリーンショット 2017 01 19 16 04 58スクリーンショット 2017 01 19 16 05 03

A グラスアイオノマーセメントで裏層し,コンポジットレジン修復
B 水酸化カルシウムで間接覆髄し,コンポジットレジン修復
C 酸化亜鉛ユージノールセメントで間接覆髄し,コンポジットレジン修復
D 水酸化カルシウムで直接覆髄し,コンポジットレジン修復
E 酸化亜鉛ユージノールセメントで仮封し,経過観察

正答 E

問題文に「間欠的な自発痛」とあるので、CR修復など最終修復に進んではいけません。もし「自発痛」が「冷水痛」であればそれが正答になりえますが、今回の場合は、歯髄の炎症が大きいので、「歯髄鎮静療法」を選ぶ必要があります。鎮静療法につかえるお薬は、ユージノールとフェノール系の2種でしたね。ユージノールは歯髄炎が広まりかけている組織を殴って!黙らせるようなお薬です(アグレッシブ!)。それで歯髄炎が収まれば、歯髄保存しCR充填できますし、自発痛が止まらなければ全部性の歯髄炎に移行したと判断され、抜髄となります。
今回はとりあえず、ユージノールということでCかEが残ろいますが、Cのユージノール+CRは「重合阻害」を起こすのでアウトです!よって、正答はEとなりなす。
このようにユージノールは、歯髄の保存可否についてリトマス試験紙のような役割でつかわれることをおさえておきましょう。また、この「歯髄鎮静療法」を「待機的診断」と呼ぶこともあります。一度、お薬を詰めて待ってみて、診断をつけるという意味です。「歯髄鎮静療法」はじめ歯髄炎の処置などについてはこちらの記事に詳しくかいていますので、あわせて参考にしてみてください。
http://www.kokushi.space/?p=883

104B-4
35歳の男性。下顎右側第一大臼歯の違和感を主訴として来院した。2週前にう蝕の治療を受け,その数日後から自覚しているという。右下6はレジン系仮封材で充填されており,間欠的な咬合痛と冷水痛とがある。歯髄電気診に反応する。仮封材除去前のエックス線写真と仮封材除去前後の口腔内写真とを別に示す。適切な処置はどれか。1つ選べ

スクリーンショット 2017 01 19 16 07 27

スクリーンショット 2017 01 19 16 07 34a IPC法
b 抜髄法
c 直接覆髄法
d メタルインレー修復
e 光硬化型グラスアイオノマーセメント修復

正答 d

こちらは、歯髄が正常と判断できます。「自発痛」ではなく「間欠的な冷水痛」で、歯髄電気診で反応しているからです。よって、最終的な修復=メタルインレー修復にうつることができます。もちろん、歯髄に近接していて刺激が伝わってしまいそうなときには、間接覆髄や裏層などお薬をつめることを途中ではさむかもしれませんが、大枠の治療方針としてはメタルインレー修復が妥当となります。問題文の冷水痛が、自発痛だったりすると、「歯髄鎮静療法」や「抜髄」を考えていかなければならなくなります。

「一過性の冷水痛」or「間欠性の自発痛」

歯内治療、エンドの問題を解く時に、問題文で常に目を光らせて置かなければいけない単語があります。それが、「一過性の冷水痛」か「間欠性の自発痛」かです。

患者の「痛みがあるのか、無いのか」=「歯髄鎮静消炎療法なのか、最終修復をやってしまって大丈夫なのか」は、上記の単語によって判断されることが多いです。

「一過性の冷水痛」や「間欠性の冷水痛」や「痛みが消退した」とあれば、歯髄はまだ健康な状態で、歯髄充血とかそんななので、「自発痛がない」と判断でき、間接覆髄法が行えます。つまり、お薬詰めて、最終処置ができます。死ぬまで症状無ければそのままで過ごせます。

一方、「間欠性の自発痛」とあれば、急性漿液性歯髄炎が疑われ、「自発痛があり」なので間接覆髄法→CR修復はすぐにはできません。一度、歯髄のリトマス試験紙、こと、酸化亜鉛ユージノールセメントなどを詰めて、「歯髄鎮静消炎療法」を行い、歯髄炎が「一部性」なのか「全部性」なのかを試験することが多いです。(もちろん、拍動性の自発痛や打診痛が顕著で歯髄炎が全部性であることが明らかである場合は、すぐに抜髄します。)

もし、自発痛あるのに、そのまま最終修復したら、病状が悪化して、全部性歯髄炎、化膿性歯髄炎→根尖性歯周炎などになってしまい、抜髄・感染根管治療を行う必要があります。何より患者の痛みを示しているのにそれを無視してCR充填してしまうなんて、現場に立ってみればありえないことだってわかるようなもんですが、文章で書かれているとリアリティが薄いですし、何より実際の経験が少ないので、そのあたりの感覚がイメージしずらいです。

今回は以上です。

歯内療法おすすめの本

新歯内療法学サイドリーダー 学建書院 2013 ★★★

サイドリーダーでは、この歯内療法の本が群を抜いておすすめです。イラストが丁寧にかかれていて、教科書の文章読んで頭のなかでイメージするしかなったような処置の様子が、ああ!こんな風にするんだ!という箇所が多く、勉強になりました。3,4年生でこれから学ぶ人も、6年になっても歯内療法が苦手!という人も、まずはこの本をみておくと入り口からスムーズに入れて、その後の知識をきちんと積み上げていけそうな気がします。

歯内療法のケースアセスメントと臨床根管形態からみる・ストラテジーを選ぶ 興地 隆史 (著) 医歯薬出版  2013  ★★★

エンド界のドン!といえば、この方、興地(おきじ)先生です。国家試験の問題作成もされていますし、学会的にもかなりの重鎮らしく、うちの先生は「日本の歯内療法は興地先生を中心に回っている」ともいっていたぐらいです。。。

エンドは、臨床系の専門書を開くと本当に有象無象の世界というか、何が正しいのかさっぱりわからなくなってしまいます。流派が乱立しているというか、これといった大正解的な方法がないのが歯内療法の特徴でもあると思います。

しかし、国家試験は違います。教科書に書いてあることが正解となります。医歯薬出版の教科書が神で、そこに載っていることが正解とされます。興地先生はこの教科書ももちろん、教科書系の本では必ず上の方に名前があります。

その興地先生の単著とあれば、その重要さ具合がわかると思います。いわゆる新問といわれるような新しい傾向のものは、このような臨床系の専門書をカバーしておくのがその対策としては妥当に思われます。Ni-Tiだったり、根管洗浄だったり(昔はスタンダードだったNaOClとH2O2の交互洗浄ではなく、今は、、、)そのあたりの臨床的な手順や道具、方法もこの本のものをイメージできるようになれば国試の臨床実地問題で迷った時に正しい方角に自然と足が伸びるようになるんだろうな、と思います。

エンドドンティクス 第4版 興地 隆史 ほか 永末書店 2015 ★★☆

教科書系では一番この本が新しく写真が豊富でわかりやすいです。歯内療法の基礎的なことから、Ni-Tiについての記述もわかりやすかったです。版も新しいですし、この方法は古いんじゃ、、、みたいなところがなかったです。医歯薬出版の教科書でわからないことでもこちらを開いて納得することが何度もあり。網羅的に短時間で勉強終わらせるには、こちらも合わせて使えるとスムーズだなと感じました。

歯内治療学 第4版 医歯薬出版 2012 ★★☆

国家試験のバイブル、医歯薬出版の教科書シリーズです。もしまだ買ってなかったり持っていない場合は、かならず国家試験の勉強を本格的に始める前に買っておきましょう。その時の最新版を。

「過去問で間違った」「この用語がわからない」そんなときはまずこの本を開いて、前後の文脈含めて読むことをおすすめします。実践の解説よんでるだけでは知識が断片的になってしまいます。文脈や意味を掴みながら系統的に勉強していきましょう。

隔壁3兄弟

まぎらわしい!「隔壁」は、3つあります。

隔壁には大きく以下の3種類があります。名前をつけた人を本当に恨みます。これが本当にややこしい。隔壁の3種類については、明確に覚えておきましょう。

  1. 保存修復|歯を削るときに隣の歯を傷つけないようにする壁=隔壁
  2. 保存修復|削った後CR充填しやすいように周りを取り囲む壁=隔壁
  3. 歯内療法|削りすぎてラバーダムできない歯質にCRで盛って作る壁=隔壁

1.保存修復|歯を削るときに隣の歯を傷つけないようにする壁=隔壁

1

2.保存修復|削った後CR充填しやすいように周りを取り囲む壁=隔壁

2

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

3.歯内療法|削りすぎてラバーダムできない歯質にCRで盛って作る壁=隔壁

隔壁形成 80

上の3つの写真は、目的が違うものですが、どれも「隔壁」という名前が付けられています。

1.歯を削る時(保存修復法)の隔壁

隣接面を削るときに、隣の歯を削らないように引いておくカバーを隔壁と呼ぶことがあります。隣接歯面の切削被害を防止したり歯周組織を損傷したりしないことが目的です。

2.充填する時(修復法)の隔壁

充填のときの隔壁は、CRを盛りやすくするために壁を立てることです。これにより、

  • 接触点の回復ができる
  • 隣接面の形を作りやすくする

ことが可能になります。難しい言葉を使うと複雑窩洞を単純化して材料の填塞や圧縮などの操作を容易にし形態付与をしやすくし、填塞された材料の強度が保たれるようになります。

2

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

接触点の回復は、歯間離開をすることも重要になります。以下の図をみるとわかりやすいかもしれません。

歯間離開 隣接面接触点の回復

歯間離開についてこちらの記事も読んでみて下さい。

「プレウェッジ」と「ウェッジ」
http://www.kokushi.space/?p=1131

充填の隔壁法で使う道具が超重要

充填時の隔壁法では、使う道具にいくつか種類があり、名前とモノを頭のなかで一致させておく必要があります。正確に細かいところまでイメージできるようにならないと国家試験ででつまずくことになります。以下の3つのポイントが重要です。

  • 透明フィルム(前歯部用)か、金属のフィルム(臼歯部用)か
  • フィルムを押さえるのは何か|指、トッフルマイヤー、リング状リテーナー、アイボリー/エリオットのセパレーター
  • 歯間離開は何でやっているか|ウェッジ、リング状リテーナ、

具体的には、大まかに以下の5種類を押さえておけばよいでしょう。どれも充填用の隔壁法です。フィルムを保持し歯間離開するために何が使われているのか。そして、そのことによって「接触点の回復」「隣接面の携帯が作りやすく」なっていることもイメージしながら…

  1. ストリップス(透明な帯のフィルム=前歯部の充填で多い)
  2. トッフルマイヤー型(古典的で強固)
  3. セクショナルマトリックス(セクショナルバンド)型|リング状リテーナーで保持
  4. セクショナルマトリックス型|アイボリー/エリオットのセパレーターで保持
  5. オートマトリックス、Tバンド(バンドだけで結べて、保持の器具がいらない)

1.ストリップス(透明な帯のフィルム=前歯部の充填で多い)

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保存修復学第5版-2007-平井義人-他-医歯薬出版

2.トッフルマイヤー型(古典的で強固)

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保存修復学第5版-2007-平井義人-他-医歯薬出版

3.セクショナルマトリックス(セクショナルバンド)型|リング状リテーナーで保持(製品名:バイタインリング)

金属製ではなく、透明なセクショルマトリックス、透明なリング状リテーナー、透明なウェッジ(光導型ウェッジ)もあります。それらは光を透過するのでレジン光重合がさらに強固にできる様になっています。

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保存修復学第5版-2007-平井義人-他-医歯薬出版

4.セクショナルマトリックス型|アイボリーのセパレーターで保持+ウェッジで歯間分離

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保存修復学21-第3版-2008-田上順次-他-永末書店

5.オートマトリックス

2

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

セルロイドストリップスは前歯!セクショナルマトリックスは臼歯!

このような細かいところをつかれることがあります。セルロイドストリップスは透明なフィルムのことです。レジンを光重合するときに、光が透過するので便利です。主に前歯部で使用します。一方、臼歯部は金属のフィルムを使うことが多いです。臨床では、臼歯部でも透明のフィルムと透明なウェッジや透明なリング状リテーナーなど使って治療すること多いですが、国家試験的にはまだ出てきていません。透明なウェッジのことを「光導型ウェッジ」と呼びます。

次のうち前歯部のCR修復に使うものはどれか。すべて選べ。

  1. セクショナルマトリックス
  2. サービカルマトリックス
  3. アイボリー型リテーナー
  4. セルロイドストリップス
  5. エリオット型リテーナー
  6. トッフルマイヤー型リテーナー

 正答 2, 3, 4, 5(エリオットは主に臼歯部ですが、前歯部でも使用可能です)

3.根管治療の時(歯内療法)の隔壁

根管治療のときに「隔壁」といったら「根管に唾液が入らないように、きれいに保つため」に行います。具体的には、虫歯が進んで歯冠が殆ど残ってない時、細菌感染(コロナルリーケージ)を起こさないように、歯の周囲に壁を作ることによって、ラバーダム防湿を可能にすることが目的です。そう、根管治療の隔壁は誰のためにやるのかというと「ラバーダム」様のためにやるのです。

追加で、周りに強固な壁をつくってあげて、歯質を一次的に回復したような状態にしておくことで、仮封材の封鎖性も高くなります。術後、次の処置までの仮封剤をボロボロの歯冠に使っても弱いのですぐ壊れてしまいます。CRで強固な壁を作って、ちょこっと蓋をしてあげることで、仮封が強固になります。
隔壁形成 80

関連する過去問を解いてみよう

104B-43
45歳の男性。下顎左側第一大臼歯の咬合痛を主訴として来院した。感染根管治療を行うこととした。 クラウンと感染象牙質を除去した後の口腔内写真と感染根管治療開始日の口腔内写真とを別に示す。
感染根管治療開始前に行った処置の目的はどれか。2つ選べ。

隔壁形成写真 80

a 歯質の保存
b 咬合の維持
c 仮封の強化
d 審美性の回復
e 術野の汚染防止

正答 c, e

「仮封の強化」が答えづらいですが、 C4ぐらいのボロボロの歯冠に仮封剤を強引に使っても弱いのですぐ壊れてしまいます。すると根管が細菌に汚染されてしまいます。そこで、CRで強固な壁を作って(隔壁の形成)、ちょこっと仮封剤で蓋をしてあげることで封鎖性が強固になります。

105D-9
26歳の女性。上顎左側小臼歯部の食片圧入を主訴として来院した。上顎左側5に自発痛はなく,歯髄電気診に反応する。コンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真とエックス線写真とを別に示す。爾窩の開拡にあたって必要な前準備はどれか。2つ選べ。

スクリーンショット 2017 01 18 1 19 46

a 隔壁
b 咬合調整
c 歯肉圧排
d 歯間分離
e ラバーダム防湿

正答 d e

ややこしいですが、削るときの隔壁も必要な気がします。でも、それ以上に「ラバーダム」は必須ですし、歯間離開は絶対的に重要です。その上でさらに削らないように隔壁を立てると安全になりますが、必須ではありません。3つ選べであれば、a, d, eが正答になっていたでしょう。

106B-4
36歳の女性。上顎左側臼歯の冷水痛を主訴として来院した。上顎左側5にコンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真、エックス線写真及びう蝕除去中の口腔内写真を別に示す。
矢印で示す器具の使用目的はどれか。1つ選べ。修復の隔壁

a 隔壁
b 防湿
c 歯問離開
d 歯肉排除
e 隣接歯保護

正答 e

この問題で、Cの写真に使われているのが、歯を削る時にでてくる隔壁です。問題を解く上では関係ないですが、この銀色のフィルムで歯を削る時に隣の歯を削ってしまわないようにガードしています。このガードのことを「隔壁」とも呼びます。問題では「目的」を聞かれているので、隣接歯保護が正答ですが、名前を聞かれたら、隔壁が答えにもなります。

93B-18
隔壁法におけるクサビ使用の目的で正しいのはどれか。2つ選べ。

a 歯間部の歯肉を圧排する。
b マトリックスバンドを圧接する。
c 接触点に間隙が生じるのを防ぐ。
d 辺縁隆線部の形成を容易にする。
e 複雑窩洞を単純窩洞化する。

正答 b c

bはこれまでの説明ですぐ理解できるかと思います。もう一つは、きっと「歯間離開」の効果について選べばいいんですが、cの「接触点に間隙が生じるのを防ぐ」というのがわかりずらいです。「接触点をきちんと作るためにやるものなのに、、、、」と思っちゃいますが、昔の問題なので、日本語がちょっとややこしい表現になっています。

要は、隔壁を使用して、歯間離開しないままだとその隔壁のフィルム厚さ分、歯間が空いてしまうということです。それを、ウェッジなりセパレーターなりをいれて歯間離開をすることで、そのスペースを利用してフィルムの厚さ分だけ多くもれるので、歯間離開を戻した時にピッタリと接触する形を作れるでしょうということです。もっと、隣接面の形の付与がし易いとか接触点の回復が可能とか、書いてくれればいいんですけどね。これからの国家試験ではこのあたりの分かりづらい表現に関してはブラフュアップがしっかりとかかっていくようになっているので、このような形で難しくなることは殆ど起きないとは思います。

今回は以上です。

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼ってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。「医歯薬出版の保存修復学」は網羅的に書いてありますが、写真や図が小さく文章で理解する割合がより多い印象を受けます。勉強が進んできてだいたいのことがわかってくると、こちらのほうが面白く感じてくるのですが、最初の段階では「保存修復学21」を携えて勉強したほうがよりわかりやすく学ぶことができると感じています。

編集仕方というか、ページのまとめ方や文字と写真、イラストの並べ方など「保存修復学21」のほうが読んでいて非常にわかりやすくできていると思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

臨床問題を得意になるコツは、基本的な処置や考え方などを1.にあげたような教科書の内容を一通り読んでから、あとは、臨床の処置の写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

もちろん、5,6年次の臨書実習のリアルな処置と教科書の内容を自分で紐付けることは非常に重要です。教科書は、臨書実習の具体的な処置内容をまとめてより抽象的に、学術的にまとめたものです。机上の勉強ではそれらをつかむだけなのでなんとなく体感がなくぼんやりとした理解ですが、その文章化された診断や治療内容を具体的なやり方・道具、手順などを実際の体験と紐付けることでより深い理解になります。そうすると国家試験のやったことない臨床問題でも、頭のなかでイメージして、正解に自分でたどり着けることが多くなります。

「プレウェッジ」と「ウェッジ」

教科書に書いていないけど、区別が重要な「プレウェッジ」と「ウェッジ」

下の2つのウェッジはいずれもモノとしては同じですが、使用方法の違いで名称が変わります。

Wedge prewedge

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

プレウェッジ=歯を削る時に使う

「感染歯質を削るとき」に使うウェッジです。歯の間に挟んで歯と歯の間を開きます。また、誤って歯間乳頭を削ってしまわないように、プレウェッジを挟んでガードします(歯間乳頭の保護)。また、歯を離すことで隣接面を削りやすくする目的もあります。下のウェッジとものとしては全く同じものなんですが、使い方で名前が変わっています。

  1. 歯間離開
  2. 歯間乳頭の保護

ウェッジ=充填する時に使う

プレがつかないウェッジは、「CR充填するとき」につかいます。もちろん、プレウェッジもウェッジを使用するので「歯を削る時」にもウェッジを使うので、どちらの用途にも使うのですが、特に歯を削るときのウェッジを「プレウェッジ」と呼びます。

歯と歯の間を離して、隣接面の接触点の形を作るスペースを作ります。隣接面が削られた状態では、隣接面の接触がなく、歯と歯の間が狭まっているので、そのままCRつめても正しくない隣接面形態になります。そこで、歯間にウェッジを挟んで歯間にスペースを作って、それぞれの隣接面の形態を作った後、ウェッジをとることで、やっと、正しい歯間距離で、隣接面が接触する、という流れです。

また、CR充填しやすいように隔壁(マトリックスバンドや透明ストリップスなど)の固定も同時に行うことができます。この場合、歯間乳頭の保護という目的はありませんね。また、歯を離すことで光照射もいろいろな角度から行うことができるようになる利点もあります。

  1. 歯間離開
  2. 隣接面の接触点の回復(歯と歯の接触点が点で接するように綺麗な曲線をつくれる)
  3. マトリックスなどの固定

「 隣接面の接触点の回復」とはどういうことか?

ウェッジによる歯間離開のポイント2で、「 隣接面の接触点の回復」とありましたが、これはどういうことなのでしょうか?以下のような図を描いてみました。こちらを見るとよりわかりやすいかもしれません。
歯間離開 隣接面接触点の回復
Bの状態で、充填が完了して、ウェッジを引き抜くと、元の正常な隣接面の状態に戻りますよね。普段の清掃や食物残渣の残りやすさを考えると隣接面は、点接触が理想的な形態です。
小児の乳歯DE間は面接触なので、より、う蝕になりやすかったですよね。点接触がやはり好ましい形態です。また、隣接面に接触点が無いと今度は、食片圧入などで歯周疾患へのリスクが高くなってしまいます。直接法のCR充填はチェアサイドでやるので、難しいですが、このあたりも考慮して治療に臨んでいきたいところです。

国家試験における「プレウェッジ」と「ウェッジ」

国家試験の問題を通して、「プレウェッジ」と「ウェッジ」を意識的に見ていきましょう。これまで学んだことの復習にもなります。写真で歯間に挟んであるものが、プレウェッジなのか、ウェッジなのか、予想しながら、問題を解いていきましょう。
107B-4
43 歳の女性。下顎左側第一大臼歯の歯質の破折を主訴として来院した。自発痛は なく、歯髄電気診に反応を示す。コンポジットレジン修復を行うこととした。修復 操作中の口腔内写真(別冊 No. 4)を別に示す。 次に行う操作はどれか。 2 つ選べ。
スクリーンショット 2017 01 13 2 26 27
a 隔壁の設置
b 修復物の除去
c 齲蝕病巣の除去
d ウェッジの除去
e ボンディング材の塗布
正答 b, c
↑この問題の場合は、「プレウェッジ」を使っていますね。CR充填時の「ウェッジ」ではないので、隔壁は関係ない、ということになります。
103B-8
32歳の男性。下顎右側大臼歯部の食片圧入を主訴として来院した。自発痛はなく、温度診に異常を認めない。コンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真とエックス線写真とを別に示す。
適切なのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2017 01 13 2 33 10
スクリーンショット 2017 01 13 2 33 14
a プレウェッジを行う
b ラバーダム防湿を行う。
c レジンコーティングを行う。
d エアブレイシブで切削する。
e 水酸化カルシウム剤で覆髄する。

正答 a,b

↑この症例もプレウェッジです。感染歯質を削る時の、隣接歯の保護と歯間乳頭の保護を行います。国家試験では、ラバーダム無しの治療はほぼないので、選択肢にあるとほぼ、正答肢になることが多いです。処置の順番を聞かれれて、ラバーダムはもっと後ですよ、みたいな感じで答えにならなかったりすることはありますが、全ての歯内治療、CR修復などではラバーダムを使用して治療を行う設定になっています。
103D-52
34歳の女性。下顎右側第一大臼歯の冷水痛を主訴として来院した。2週前から一過性の冷水痛を自覚するようになったという。電気診に正常に反応する。コンポジットレジンで修復することとした。初診時のエックス線写真と感染象牙質除去後の口腔内写真とを別に示す。
修復に必要なのはどれか、2つ選べ。
スクリーンショット 2017 01 13 2 40 08
a ウェッジ
b 圧排用綿糸
c セメント裏層器
d マトリックスバンド
e サービカルマトリックス
正答 a, d
↑これは、充填時の「ウェッジ」です。「プレウェッジ」ではありません。ちょうど下の右の図のような感じにして、CR充填をしていきたいので、ウェッジとマトリックスバンドを使用するのが正答になります。この作業のことを「複雑窩洞(隣接にも咬合面にも開いている窩洞)を単純窩洞(咬合面にのみ開いている窩洞)にする」という表現を使うこともあります。言葉の使い方がわからないだけで、問題が非常に難しくなってしまうことが多いので、知らない表現がでてきたら、その場で誰かに聞くか調べるかして、しっかりと自分の中でイメージできるようにしていきましょう。知らない言葉を潰していくことは、合格のために重要な習慣だと思います。

Wedge prewedge

保存修復学21 第3版 2008 田上順次他 永末書店 より

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼ってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。「医歯薬出版の保存修復学」は網羅的に書いてありますが、写真や図が小さく文章で理解する割合がより多い印象を受けます。勉強が進んできてだいたいのことがわかってくると、こちらのほうが面白く感じてくるのですが、最初の段階では「保存修復学21」を携えて勉強したほうがよりわかりやすく学ぶことができると感じています。

編集仕方というか、ページのまとめ方や文字と写真、イラストの並べ方など「保存修復学21」のほうが読んでいて非常にわかりやすくできていると思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

臨床問題を得意になるコツは、基本的な処置や考え方などを1.にあげたような教科書の内容を一通り読んでから、あとは、臨床の処置の写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

もちろん、5,6年次の臨書実習のリアルな処置と教科書の内容を自分で紐付けることは非常に重要です。教科書は、臨書実習の具体的な処置内容をまとめてより抽象的に、学術的にまとめたものです。机上の勉強ではそれらをつかむだけなのでなんとなく体感がなくぼんやりとした理解ですが、その文章化された診断や治療内容を具体的なやり方・道具、手順などを実際の体験と紐付けることでより深い理解になります。そうすると国家試験のやったことない臨床問題でも、頭のなかでイメージして、正解に自分でたどり着けることが多くなります。

「隔壁が先か、歯間離開が先か」CR修復

今回はこの問題です。

104D-37

27歳の男性。上顎左側臼歯部の痛みを主訴として来院した。一過性の冷水痛を認める。左下5にコンポジットレジン修復を行うこととした。初診時の口腔内写真と罹患歯質除去後の口腔内写真撮を別に示す。次に行うのはどれか。1つ選べ。

a 歯間離開
b 接着操作
c 裂溝の形成
d 隣接面の予防拡大
e マトリックスの挿入

スクリーンショット 2017 01 11 19 24 42

正答 e

隔壁の作る順序

歯間離開とマトリックスどちらが先か…写真Bでう蝕の除去をしているので、次はCR充填していきます。隣接面のところにも充填するので、隔壁を作らないといけません。歯間離開とマトリックスの挿入、どちらもやるはずですが、その順番はどちらが先になるでしょうか。

充填時の隔壁の手順:マトリックスが先

  1. マトリックスの挿入
  2. 歯間離開(ウェッジやリング型リテーナー)

充填時の隔壁は上記の順番になります。なぜでしょうか?実際に自分でやってみるとわかるのですが、ウェッジやリング型リテーナーは歯を強く押すことで歯と歯の間をあけます。よって、ウェッジをいれたままだと、マトリックスをいれることができません。なので、まずは、マトリックスを先に入れて、それを固定するとともに、歯間離開もするために、ウェッジやリング型リテーナーをいれます。このあたりは実際の作業をやってみると当たり前のことなのですが、机の上で問題を解いているだけだとわかりづらいです。 しかもこれらの一連の作業は非常に細かい部分なので臨床実習で見ていたとしても注意深く意識を向けていないと見逃してしまいそうなところです。

残念ながら、この類の問題を勉強するには、国家試験の過去問を解いて、1度間違い、それから教科書などをもう一度詳しく読んでいくというようなやり方でしか身につけることができないと思います。

今回は以上になります。

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼ってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。「医歯薬出版の保存修復学」は網羅的に書いてありますが、写真や図が小さく文章で理解する割合がより多い印象を受けます。勉強が進んできてだいたいのことがわかってくると、こちらのほうが面白く感じてくるのですが、最初の段階では「保存修復学21」を携えて勉強したほうがよりわかりやすく学ぶことができると感じています。

編集仕方というか、ページのまとめ方や文字と写真、イラストの並べ方など「保存修復学21」のほうが読んでいて非常にわかりやすくできていると思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

臨床問題を得意になるコツは、基本的な処置や考え方などを1.にあげたような教科書の内容を一通り読んでから、あとは、臨床の処置の写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

もちろん、5,6年次の臨書実習のリアルな処置と教科書の内容を自分で紐付けることは非常に重要です。教科書は、臨書実習の具体的な処置内容をまとめてより抽象的に、学術的にまとめたものです。机上の勉強ではそれらをつかむだけなのでなんとなく体感がなくぼんやりとした理解ですが、その文章化された診断や治療内容を具体的なやり方・道具、手順などを実際の体験と紐付けることでより深い理解になります。そうすると国家試験のやったことない臨床問題でも、頭のなかでイメージして、正解に自分でたどり着けることが多くなります。

知ってますか?酸素遮断剤の使い方

今日はこの問題です

108B-44

37 歳の女性。上顎左側中切歯の審美不良を主訴として来院した。オールセラミッククラウンによる補綴歯科治療を行うこととした。デュアルキュア型レジンセメン トによる装着過程の操作順の写真(別冊 No. 44A、B、C、D、E)を別に示す。 B の操作を行う際の留意点はどれか。 2 つ選べ。

a 酸素遮断剤と併用する。
b 浮き上がりに注意する。
c 光照射は単一方向から行う。
d 光照射時間は数秒以内とする。
e クラウン圧接後、数分待って照射する。

スクリーンショット 2016 12 08 11 31 52スクリーンショット 2016 12 08 11 32 03

正答 b,d

デュアルキュア型の接着性レジンセメント

この問題自体は割りと答えやすいですよね。特に臨床実習中にたくさんみる処置の一つだと思います。セメントでいま一番使われているデュアルキュア型の接着性レジンセメントで、デュアル=2つの硬化システム=光重合+化学重合をもつレジンセメントです。光が届く部分に関しては、光重合で。メタルインレーなど光が届かない場合でも化学重合で十分硬化させれるという優れものです。接着の強さも、セメント自体の強度も強く、脱離の少ない優等生と言った感じでしょうか。

さらに、素晴らしいのは「余剰セメント除去が簡単」ということでしょう。余剰セメントは除去できないと歯周炎にもつながるので、しっかりとりきらなければならず、時間のかかる作業だったのですが、これを一瞬で終わらせることができます。手技としては、

  1. 修復物内面にセメント塗布→支台歯に圧接
  2. あぶれた余剰セメントに、数秒の光照射→セメントが半硬化(タックキュア)
  3. 探針で一気にペリッと剥がせる
以上です。これは、デュアルキュア型セメントの特徴的な操作です。その後、しっかり光照射する(光重合)+時間をおく(化学重合)ことで、最終硬化が得られます。余剰セメントを最終硬化までしてしまうと除去がすごく大変になるので、その点要注意です。国試ではこの「セメントの半硬化」について主に問われていました。

酸素遮断剤ってなんだろう?

選択肢にある「酸素遮断剤」は知っていますか?解答には関係ないものの、今後正答肢として出題される可能性も高いです。酸素遮断剤がいつ、どこで使用されるのか、おさえておきましょう。実は、酸素遮断剤は、余剰セメント除去の後に行うべき操作なんです。写真やイラストは見たことないし、臨床実習でも見る機会が少ないと思います。酸素遮断剤は以下のようなものです。

  • 酸素に触れている接着性レジンセメントの最表層(フィニッシュラインの表面)は未重合層として残る
  • 間接法の修復物を装着後、酸素遮断剤を塗布→未重合層が完全に化学重合できる!
  • 酸素遮断剤は、酸素も遮断するが、重合開始剤も含んでおり、化学重合を積極的に促進

以下に、実際に日本で販売されている酸素遮断剤「オキシガードⅡ」という商品の説明書のイラストを紹介します。このように手技が見えるとわかりやすいですね。パナビアという接着性レジンセメントとセットで売られています。

酸素遮断剤

グラスアイオノマー修復のバーニッシュ

似てるのかどうかわかりませんが、グラスアイオノマー修復のときに最後に塗布するバーニッシュはこの酸素遮断剤と少し似ているかもしれません。グラスアイオノマーセメントは「初期感水性」があり、完全硬化するまでの間、水分を排除しておくことが有効です。そのために充填後、バーニッシュを表面に塗ります。ワセリンを表面に塗って、水を弾くようにする、といったような感じです。「硬化が最後まで進むように塗るお薬」という意味では同じような役割ですよね。機序や物質は全くちがいますが…

レジンセメントの未重合層への対応

以下にレジンセメント未重合層への対応をまとめておきます。大体以下の4つの方法で、未重合層を除去することが可能です。
  1. 最終硬化後の研磨
  2. サービカルマトリックス、透明ストリップスによる圧接で酸素を除去→未重合層が発生しない
  3. アルコール清拭で未重合層の除去(レジンコーティング法、シーラントなど)
  4. 酸素遮断剤の塗布(酸素ない状態で化学重合を促進させる)

歯髄の検査は奥が深い

新作
50歳の女性。下顎右側臼歯部のブラッシング時の疼痛を訴えて来院した。初診時の口腔内写真を別に示す。原因歯を特定するために行う検査として有効なのはどれか。2つ選べ。
スクリーンショット 2016 12 08 13 28 44
  1. 歯髄電気診
  2. 温度診
  3. 擦過診
  4. 透照診
  5. 打診
正答 2,3

歯髄検査の違い

歯髄検査で、温度診や歯髄電気診などありますが、それらの違いを問われています。温度診も歯髄電気診も歯髄の生死を確かめることができますが、この問題のように象牙質知覚過敏症の診断には、歯髄電気診はあまり役立ちません。過去問では歯髄の生死に関しての検査の問題が多いように思いますが、知覚過敏の診断、と比較すると意外な違いがみえてきます。この問題は「象牙質知覚過敏症の検査はどれですか?」と問うています。
  • 擦過診:健康歯(ー)知覚過敏(+)失活歯(ー)
  • 温度診:健康歯(+)知覚過敏(+)失活歯(ー)
  • 歯髄電気診:健康歯(+)知覚過敏(+)失活歯(ー)
擦過診:歯髄生死わからない
温度診:知覚過敏・歯髄生死どちらも有効
歯髄電気診:知覚過敏わからない
単純性歯髄炎では、歯髄電気診の閾値が下がり、
化膿性歯髄炎では、歯髄電気診の閾値が上がりますが、
診断できるほどの指標にはなりえず、参考値といった感じでしょうか。
歯肉退縮→歯根露出→象牙質知覚過敏症は高齢化の今にまさに問われやすい項目で。検査方法もしっかりと理解しておきましょう。今回は以上です。

わかりやすい!歯髄炎とその治療法

歯髄炎の似ている3処置「削ってからお薬を詰める」

国家試験で問われる歯髄炎の処置でややこしいものが3つあります。

  1. 歯髄鎮静消炎療法
  2. 間接覆髄法
  3. 暫間的間接覆髄法(IPC法)

これらはいずれも「削ってからお薬を詰める」という共通点をもっていますが、それぞれやろうとしていること=目的が違ってきます。今回はこれらをシンプルにまとめて全体像を把握することを試みたいと思います。

1.歯髄鎮静消炎療法

自発痛があるときに、とりあえず、落ち着かせる目的で薬をつめる。

2.間接覆髄法

全部削ったら、壁が薄くなってしまったので薬で壁を厚くする。(自発痛が無い時のみ!)

3.暫間的間接覆髄法(IPC法)

全部削ったら露髄する状態で、一度薬で壁を厚くしてから、感染歯質を全部削る。(自発痛が無い時のみ!)治療期間が3ヶ月ぐらいかかります。

1.歯髄鎮静消炎療法

自発痛があるときに、とりあえず、落ち着かせる目的で薬をつめる方法です。

「酸化亜鉛ユージノール」や「フェノールカンフル」は歯髄炎のリトマス紙のような薬です。

可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎を見分けることができる、唯一の薬だからです。例えば、リトマス紙は酸性とアルカリ性を判断できます。また、う蝕検知液は、その歯質が感染しているかどうかを識別することができます。同じように、酸化亜鉛ユージノールは、痛みのあるその歯髄が、「可逆性(保存可能)か不可逆(抜髄)か」を、識別することができる薬液です。

酸化亜鉛ユージノールを窩底に塗ってみて、

歯髄の痛みが治まれば

「可逆性歯髄炎(=一部性単純性歯髄炎)」「間接覆髄法」を行う

痛みがおさまらなければ

「不可逆性歯髄炎(=全部性歯髄炎)」「麻酔抜髄法」を行う という風に、治療内容を決定することができます。

歯髄鎮静消炎療法

2.間接覆髄法

似ている処置で間違いやすいのが、この間接覆髄法です。どちらも「軟化象牙質の除去」「窩洞形成」してから行う処置ですが、歯髄鎮静消炎療法とは、明確に違うものです。

間接覆髄法は、感染象牙質除去後の処置であるとともに、基本的に歯髄に自発痛があるときには行えない処置です(また、歯髄鎮静消炎療法がうまく効かないときには行えません)。

問題文中で「自発痛」がある場合は、行えません。「一過性の冷水痛」や「痛みがない」「インピーダンス測定検査では30kΩ?(値は私見です。ただ、20 kΩ程度だと、一回では終わらずに2回治療の待機的診断として問題を作ろうと試験委員は考えるかもしれません。)」「感染(軟化)象牙質を除去した」などの表現の時に行うことができます。

歯髄鎮静消炎療法の目的

  • 痛みの除去

  • 炎症の消退

  • 可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎の診断

間接覆髄法の目的

  • 菲薄化した健康象牙質の保護

  • 歯髄側への修復象牙質(第3象牙質)の形成

間接覆髄法で使用する薬も歯髄鎮静消炎療法とは違います。「水酸化カルシウム製剤」、「酸化亜鉛ユージノールセメント」などを使用し、第3象牙質の形成を促します。間接覆髄法を行うときには、歯髄は「保存できる」ので、インレーやCRによって最終修復を行います。酸化亜鉛ユージノールセメントは第3象牙質の形成能は水酸化カルシウムに比べて低いが、仮封にも使えます。

3.暫間的間接覆髄法(IPC法)

歯髄鎮静消炎療法や間接覆髄法に似ていて大変間違いやすいのが、暫間的間接覆髄法(IPC法)です。暫間的間接覆髄法(IPC法)の特徴は、軟化象牙質を残したままにすることです。

前の2つは、軟化象牙質を全て除去した後の処置でした。IPC法では、軟化象牙質を残したまま、再石灰化を促すお薬を塗って、1度目の治療を終えます。(全ての軟化象牙質を除去してしまうと露髄する可能性があるので、抜髄したくない一心で、第三象牙質が十分できてくれることと炎症がなくなることを祈ります。)

問題文中で「自発痛」がある場合は、行えません。状況としては、「一過性の冷水痛」や「痛みがない」「露髄していないが、不注意に切削すると露髄する可能性のある深在性(深い)齲蝕がある」などの表現で示されます。また、術中の状態としては、「軟化象牙質除去中」という表現がよく使われます。また、「罹患歯質を可及的に除去した(感染象牙質を一部だけ除去したけど、まだ残っているという意味です。)」「軟化した歯質がなお残存している」などの表現も時使われます。

3ヶ月後、再度、開けてみて十分に第三象牙質ができていることをX線で確認できたら、全ての軟化象牙質を除去し、初めて覆髄や裏層、CR充填などの最終的な処置を行うことができます。

間接覆髄法は1回の処置で終了するのに対して、IPC法では、軟化象牙質を残したまま覆髄して、3カ月以上待って再度処置(リエントリー)を行うところが大きく違う点です。

暫間的間接覆髄法で使用できる薬剤は、水酸化カルシウム製剤、タンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメントです。

処置の効果をみるために、すぐに次の処置を行わない、待機的診断を行う点では、歯髄鎮痛消炎療法と似ています。

国家試験的な薬のまとめ

臨床現場とは異なるかもしれませんが、教科書と過去の国家試験を照らしあわせた処置と薬の組み合わせは以下のとおりです。

1.歯髄鎮静消炎療法

  • 酸化亜鉛ユージノール製剤
  • フェノールカンフル

2.間接覆髄法

  • 水酸化カルシウム製剤
  • 酸化亜鉛ユージノール

3.暫間的間接覆髄法(IPC法)

  • 水酸化カルシウム製剤
  • タンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメント

4.直接覆髄法

  • 水酸化カルシウム製剤
  • MTAセメント

演習問題

それではこれまで学んだことを使って以下の 6問を解いてみましょう。

写真は以下のものを共通で使います。

1

45歳の男性。下顎左側第一小臼歯の一過性の冷水痛を主訴として来院した。軟化象牙質を除去した。初診時の口腔内写真とX線写真とを別に示す。次に使用するのはどれか。1つ選べ。

  1. MTAセメント
  2. パラホルムセメント
  3. 酸化亜鉛ユージノールセメント
  4. レジン添加型グラスアイオノマーセメント
  5. タンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメント

【思考回路】

  • 齲窩は歯髄に近接
  • 一過性の冷水痛:生活歯、歯髄充血?
  • 軟化象牙質は全部除去できた
  • 間接覆髄法→酸化亜鉛ユージノール(あるいは、水酸化カルシウムセメント)

正答 3

2

45歳の男性。下顎左側第一小臼歯の間欠性の自発痛を主訴として来院した。患歯は食片が圧入した際に痛みが強くなるという。外層部のう蝕を可及的に除去後、窩底部のう蝕は残したままセメントを填塞し、経過観察することとした。初診時の口腔内写真とX線写真とを別に示す。次に使用するのはどれか。1つ選べ。

  1. MTAセメント
  2. パラホルムセメント
  3. 酸化亜鉛ユージノールセメント
  4. レジン添加型グラスアイオノマーセメント
  5. タンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメント

【思考回路】

  • 齲窩は歯髄に近接
  • 間欠性の自発痛:単純性(漿液性)歯髄炎、一部性か全部性かわからない。
  • 軟化象牙質を痛みのため、全部除去できず
  • 麻酔が使えない緊急時の歯髄鎮静消炎療法→酸化亜鉛ユージノール

正答 3

3

45歳の男性。下顎左側第一小臼歯の間欠性の自発痛を主訴として来院した。2週間前に、窩底部のう蝕は残したまま酸化亜鉛ユージノールセメントを填塞し、経過観察していた。初診時の口腔内写真とX線写真とを別に示す。次に行うのはどれか。1つ選べ。

  1. 抜髄
  2. 間接覆髄法
  3. 暫間的間接覆髄法
  4. アペキシフィケーション
  5. 感染根管処置

【思考回路】

  • 齲窩は歯髄に近接
  • 間欠性の自発痛:単純性歯髄炎
  • 歯髄鎮静消炎療法行ったが奏功せず=全部性単純性歯髄炎→抜髄

正答 1

問4

45歳の男性。2週間前に、下顎左側第一小臼歯へ窩底部のう蝕は残したまま酸化亜鉛ユージノールセメントを填塞し、経過観察していた。疼痛は消退したという。初診時の口腔内写真とX線写真とを別に示す。次に行うのはどれか。1つ選べ。

  1. 抜髄
  2. 間接覆髄法
  3. 暫間的間接覆髄法
  4. アペキシフィケーション
  5. 感染根管処置

【思考回路】

  • 齲窩は歯髄に近接
  • 歯髄鎮静消炎療法行って、歯髄の消炎に成功した。
  • 窩底が歯髄に近接しているので、間接覆髄法

正答 2

問5

45歳の男性。下顎左側第一小臼歯の間欠性の自発痛があったが、現在は痛みが消退しているという。軟化象牙質を可及的に除去後、窩底部のう蝕は残したままセメントを填塞することとした。初診時の口腔内写真とX線写真とを別に示す。

使用するのはどれか。1つ選べ。

  1. MTAセメント
  2. パラホルムセメント
  3. 酸化亜鉛ユージノールセメント
  4. レジン添加型グラスアイオノマーセメント
  5. タンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメント

【思考回路】

  • 齲窩は歯髄に近接
  • 軟化象牙質を除去すると露髄の恐れのため全部除去できず
  • 暫間的間接覆髄法
  • 3ヶ月後に再度、修復象牙質の形成を確認する
  • 十分であれば、軟化象牙質を全部除去後、間接覆髄法。

正答 5(水酸化カルシウム製剤でも可)

問6

45歳の男性。下顎左側第一小臼歯の間欠性の自発痛があったが現在は消退しているという。窩洞形成中に点状の露髄を認めた。そのままセメントを填塞し、経過観察することとした。初診時の口腔内写真とX線写真とを別に示す。

使用するのはどれか。1つ選べ。

  1. MTAセメント
  2. パラホルムセメント
  3. 酸化亜鉛ユージノールセメント
  4. レジン添加型グラスアイオノマーセメント
  5. タンニン・フッ化物合剤配合カルボキシレートセメント

【思考回路】

  • 齲窩は歯髄に近接
  • 軟化象牙質は全部除去できた(窩洞形成の段階に入っているため)
  • 窩洞形成時の偶発露髄→直接覆髄法

正答 1(水酸化カルシウム製剤でも可)

【臨床問題を解く上で重要なポイント】 「一過性の冷水痛」or「間欠性の自発痛」

問題の主文で患者の「痛みがあるのか、無いのか」=「歯髄鎮静消炎療法なのか、間接覆髄法なのか」は、上記の単語によって判断されることが多いです。

「一過性の冷水痛」や「間欠性の冷水痛」や「痛みが消退した」とあれば、歯髄はまだ健康な状態で、歯髄充血とかそんななので、「自発痛がない」と判断でき、間接覆髄法が行えます。つまり、お薬詰めて、最終処置ができます。死ぬまで症状無ければそのままで過ごせます。

一方、「間欠性の自発痛」とあれば、急性漿液性歯髄炎が疑われ、「自発痛があり」なので間接覆髄法はすぐにはできません。一度、歯髄のリトマス試験紙、こと、酸化亜鉛ユージノールセメントなどを詰めて、「歯髄鎮静消炎療法」を行い、歯髄炎が「一部性」なのか「全部性」なのかを試験することが多いです。 自発痛あるのにそのまま薬詰めて最終処置したら、全部性歯髄炎、化膿性歯髄炎→根尖性歯周炎などが多く、病状が悪化していくので、抜髄を行う必要があります。何より患者の痛みを放置するのは、医療人としてありえないことなんですが、文章で書かれているとリアリティが薄いので、そのあたりの感覚が希薄になりがちですよね。

今回は以上です。

歯内療法おすすめの本

新歯内療法学サイドリーダー 学建書院 2013 ★★★

サイドリーダーでは、この歯内療法の本が群を抜いておすすめです。イラストが丁寧にかかれていて、教科書の文章読んで頭のなかでイメージするしかなったような処置の様子が、ああ!こんな風にするんだ!という箇所が多く、勉強になりました。3,4年生でこれから学ぶ人も、6年になっても歯内療法が苦手!という人も、まずはこの本をみておくと入り口からスムーズに入れて、その後の知識をきちんと積み上げていけそうな気がします。

歯内療法のケースアセスメントと臨床根管形態からみる・ストラテジーを選ぶ 興地 隆史 (著) 医歯薬出版  2013  ★★★

エンド界のドン!といえば、この方、興地(おきじ)先生です。国家試験の問題作成もされていますし、学会的にもかなりの重鎮らしく、うちの先生は「日本の歯内療法は興地先生を中心に回っている」ともいっていたぐらいです。。。

エンドは、臨床系の専門書を開くと本当に有象無象の世界というか、何が正しいのかさっぱりわからなくなってしまいます。流派が乱立しているというか、これといった大正解的な方法がないのが歯内療法の特徴でもあると思います。

しかし、国家試験は違います。教科書に書いてあることが正解となります。医歯薬出版の教科書が神で、そこに載っていることが正解とされます。興地先生はこの教科書ももちろん、教科書系の本では必ず上の方に名前があります。

その興地先生の単著とあれば、その重要さ具合がわかると思います。いわゆる新問といわれるような新しい傾向のものは、このような臨床系の専門書をカバーしておくのがその対策としては妥当に思われます。Ni-Tiだったり、根管洗浄だったり(昔はスタンダードだったNaOClとH2O2の交互洗浄ではなく、今は、、、)そのあたりの臨床的な手順や道具、方法もこの本のものをイメージできるようになれば国試の臨床実地問題で迷った時に正しい方角に自然と足が伸びるようになるんだろうな、と思います。

エンドドンティクス 第4版 興地 隆史 ほか 永末書店 2015 ★★☆

教科書系では一番この本が新しく写真が豊富でわかりやすいです。歯内療法の基礎的なことから、Ni-Tiについての記述もわかりやすかったです。版も新しいですし、この方法は古いんじゃ、、、みたいなところがなかったです。医歯薬出版の教科書でわからないことでもこちらを開いて納得することが何度もあり。網羅的に短時間で勉強終わらせるには、こちらも合わせて使えるとスムーズだなと感じました。

歯内治療学 第4版 医歯薬出版 2012 ★★☆

国家試験のバイブル、医歯薬出版の教科書シリーズです。もしまだ買ってなかったり持っていない場合は、かならず国家試験の勉強を本格的に始める前に買っておきましょう。その時の最新版を。

「過去問で間違った」「この用語がわからない」そんなときはまずこの本を開いて、前後の文脈含めて読むことをおすすめします。実践の解説よんでるだけでは知識が断片的になってしまいます。文脈や意味を掴みながら系統的に勉強していきましょう。

デンタルX線写真でで左右がわからなくなる時、、、

デンタルX線写真でで左右がつい、わからなくなる時があります。パノラマ、CT、MRIではそんなこと無いんですが。欠損歯が多かったり部分的にしか写っていないとつい、わからなくなります。そんな時の対処法です。
今回はこの問題です。

正答 e

 

 

デンタル写真がどの向きから撮られているのかわからない

この問題、デンタルX線写真がどの向きから撮られているのか、わからなくなります。デンタル一枚で隣在歯があまり移ってないと、あれこれって右側だっけ?左側だっけ?よくわからなくなる。そんなときは、以下のように図を書いていきましょう。ポイントは、パノラマ写真の図で、位置を書き出してみることです。書き方を順に示していくので、是非一緒に書いてみて下さい。すぐ身につくと思います。

まず下顎骨を単純に書きます。

下顎骨を書いたら、対象の歯を書きます。この問題では左下3です。

次に普通の撮影の向き、偏心投影法の向きを書きます。上から下顎骨をみた図に変わっています。普通の撮影は、正放線撮影なので、以下のように歯の唇側から真正面に撮る感じになります。そして、問題文では「偏遠心」からとったというので、また以下の図のように偏心撮影の方向の矢印を書きます。偏遠心から撮ると歯を真横からみるような感じになるんだなというのがわかります。

これであらためて、問題の歯の図を見てみましょう。

Bが普通の撮影、Cが遠心側から取ったものです。偏遠心から撮ると歯を真横からみるような感じになるんだなというのがわかります。うまく歯列のなかにはめ込んでイメージできるようになりましたでしょうか?わかりやすくイラストで描くと以下のようになります。

唇側の方に、穴を掘り進めていたので、根管にたどり着けてないんだな、ということがわかりますね。ということで、もっと舌側の歯質を探っていけば根管に辿り着けそうだ、ということがわかります。

 

パノラマでは左右がわかりやすい

パノラマ写真で左右の判断がし易いです。何度も見て慣れているからですね。逆に、デンタル1枚で隣在歯がなかったりすると左右がわからなくなりがちです。そんなときは、そのデンタルをパノラマ写真の中に埋め込んで考えてみましょう。左右を一瞬でイメージできるようになります。今回は以上です。

根充後の根尖部の微妙な変化

まずはこの問題を解いて下さい。

97B-48
根管充填後の治癒で正しいのはどれか。3つ選べ。

  1. セメント質の増生
  2. マラッセ上皮遺残の増殖
  3. シャーピー線維の減少
  4. 線維性結合組織による瘢痕化
  5. 溢出根管充填材の線維性被包化

正答 1,4,5

 

4,5は問題なく選べると思います。気になるのは、1.の「セメント質の増生」がよくわからず、気持ちよく選べません。今回はこれについてしっかりとイメージつけていきましょう。

つまり、根管充填が成功すると、根尖孔のところにもセメント質ができてしまうということです。根がまるっとセメント質で覆われてしまう形になります。生活歯では、血管やら神経やらが通るためにそこにはセメント質がなかったけど、根管充填するとその孔分のセメント質が増生しますよ、という、超細かい世界の話です。

ちなみにこれのことを「骨性瘢痕治癒」と呼びます。病理の疾患名とも深く関係する言葉の使い方なので「骨」と「セメント」の言葉についてきちんと理解しましょう。

109回でも問われています。

109A-75
骨性瘢痕治癒が生じるのはどれか。2つ選べ。

  1. 間接覆髄
  2. 直接覆髄
  3. 生活断髄
  4. 直接抜髄
  5. 感染根管治療

正答 4,5

 

骨とセメント質はすごーく似ているので、組織像的にも見分けがつかなくなってきたりします。
歯根部に線維化→硬組織ができてしまう、「骨性異形成症」というのがありますが、これも昔は「セメント質骨性異形成症」と呼んでいましたが、WHOが「セメント質?いや、もう骨と見分けつかないから、骨でまとめるわ」っていって骨性だけと書かれてしまって、歯科的には非常に覚えづらい病名になってしまっています。(「骨形成線維腫」も旧名「セメント質骨形成線維腫」です。)この問題も、「セメント質骨性瘢痕治癒」って問われていたらもっと正答率があがったはずです。国家試験では、そういう嫌なところをついて問題を作ってきますよね。

今回は、以上です。

「修復象牙質(第三象牙質)」と「デンティンブリッジ」は違うものです

今回は歯内療法から、非常にベーシック内容です。
必修問題対策で、確実にイメージをつけていきましょう。

 

新作

暫間的間接覆髄法の主な目的はどれか。2つ選べ。
a 歯髄の乾屍
b 歯髄の血流回復
c 修復象牙質の形成
d 感染象牙質の再石灰化
e デンティンブリッジの添加

正答 c d

修復象牙質は、「露髄していない象牙質の下に」できていきます。
デンティンブリッジは、「露髄した歯髄のところに」できていきます。

修復象牙質は、間接覆髄法、IPC法などではお薬を塗って形成を促進させますが、お薬を使わなくとも、エナメル質がなくなり、象牙質が露出した状態が続くと外からの刺激に対する防御反応として、生理的に作られていきます。

デンティンブリッジは、基本的には薬で作るものです。露髄面に水酸化カルシウム製剤などを塗り、その直下の歯髄を壊死させます。それが保護層となり、その下に象牙芽細胞が誘導されて、
デンティンブリッジが作られます。橋のように象牙質の間を渡します。被蓋硬組織などど呼ぶこともあります。デンティンブリッジが関係するのは、「直接覆髄法」「生活歯髄切断法」「アペキソゲネシス」です。

「アペキシフィケーション」は根尖部に硬組織を作ります。デンティンブリッジではありません。セメント質様硬組織、骨様硬組織などと呼ばれます。

リーマーとファイルの記号

リーマーとファイルの記号についてまとめました。

  1. リーマーは「ドリル」の「リ」! ドリルが回転するように突き進んでいく感じで覚えましょう。3つのうちで最も穿通性が高い、強力なやつです。リーマーは三角柱をねじって作られるので、記号は「△」です。臨床的には根管内の切削はより繊細に行いたいので、リーマーを使う人は減ってきていると思います。
  2. Hファイルは、Hなので「ピストン運動」ということで、上下運動する、というように覚えましょう。笑。あと、ピストン運動は穴に向かってするので、記号は「○」です。リーミング=回転運動すると、中折れするのでw、絶対にしてはいけません。根管内破折は恐ろしいです。挿入後はひたすらピストン運動で攻めましょう。
  3. Kファイルは、上の2つの融合したハイブリッドタイプな感じです。ピストン運動も、回転運動も大丈夫なように、後から開発されたんだと思います。記号は「□」です。

リーマー、ファイルの規格

今日はこの問題です。

98B-41
リーマー、ファイルのISO規格で正しいのはどれか。1つ選べ。

a 40番のD1は0.40mmである
b 刃部の長さは番号で異なる。
c 刃部のテーパーは番号で異なる。
d 先端の角度は30度である。
e 45番の把柄部の色は黒である。

正答 a

昔はよく出ていましたが、最近はあまりでなくなった、リーマーファイルの規格。でも出るとしたら必修とかで出そうで怖いです。しっかり復讐しておきましょう。

 

重要な数字、「1/100」「2/100」

「1/100」「2/100」と覚えましょう。
「1/100」は先端の太さです。番号に1/100をかけた値がそのファイルの先端径になります。#15であれば、0.15mmが先端径の大きさです。
「2/100」は、テーパーです。1mmあたり、2/100すなわち、0.02mmずつ太くなっていきます。刃部の長さは、16mmで統一されていますので(もっと長いのももちろんあります)、先端径+16*0.02で根本の径が計算できます。

 

色のゴロ「指揮、顔ミクロ」

色は、白、黄、赤、青、緑、黒、という順番で周期的に繰り返しています。僕は「指揮、顔ミクロ」で覚えています。指揮者が顔に力入れて、顔をミクロに縮こませながら、指揮棒をふっている姿をイメージしながら。。。

60才で節目を迎える

人は60才で節目を迎えます。還暦というやつですね。ファイルも15番から始まり60番までは、順調に「5」ずつ増えますが、60番から「10」ずつ増えます。「60」に大きな節目があると覚えましょう。

わかりやすい歯科用レーザー

歯科用レーザー

歯科用レーザー、わかりずらいですよね。今回はこの問題です。

106C-91
Er:YAGレーザーの特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。

a 熱の影響が大きい。
b 組織深部に到達する。
c 固体レーザーである。
d 波長は可聴域にある。
e 水への吸収率が高い。

正答 c,e

Er:YAGはエルビウムヤグと呼びますが、まったく馴染みがなく、なかなかイメージをもてません。他にもCO2レーザーや半導体レーザー、アルゴンガスレーザーなど、いろんな種類がでてきて、それぞれを大づかみに理解するのが難しい感じになっています。以下のように考えるとわかりやすいと思います。

 

 

レーザーは3種類に分類しましょう。

歯科用レーザー

 

レーザー、いろいろあって、よくわからないのですが、とりあえず、上図のように3種類に分類しましょう。このグラフの形も少し頭にいれたほうがよいです。縦軸が「水吸収係数」、横軸が「波長=レーザーの振幅」です。
縦軸の「水吸収係数」とは、「光線を水に入射させたとき、光線の強度がどのくらい減衰するか」を表したものです。普通は、波長と比例して、水吸収係数は大きくなります。(=浅い部分でとまってしまう)

波長が短い=浸透性が高い
波長が長い=浸透性が低い

電磁波の大原則を覚えましょう。光もX線ような放射能も電波もみんな電磁波で、単に波長の違いで違う名前を与えられているだけです。そして、波長が長くなればなるほど、浸透性が低くなります。正確ではないんですが、下図のようなイメージをすると覚えやすいです。つまり、レーザーの波長レベルまで人体を拡大すると人体の原子レベルまで拡大されてちょうど網の目のような感じなります。この網の目を通り抜けやすいのは、波長が短いレーザーです。逆に波長が長くなると、その網に引っかかりやすくなり、浸透性が低くなります。

波長と浸透性歯科用レーザー

 

 

 

1.波長が短い=コンポジットレジンの光照射用

改めて、グラフをみてみると、波長が短いグループは、浸透性がよいので奥の方まで届きます。この性質は、コンポジットレジンの光照射に適しているので、それ用のレーザーとして使用されていました。(現在はLEDレーザーができたので、これらは使用されていません。)
このグループに属すのは、

  • Xeレーザー(キセノン)
  • Arレーザー(アルゴン)
  • He-Neレーザー(ヘリウム-ネオン)

アルゴンとか、ヘリウムとか、気体が多いですね。
波長が短いグループ「気体レーザー」が多いとわかりますね。

3.波長が長い=浅い部分までしかいない=表面の破壊力が大きい

波長が長いと、表面で止まってしまいます。しかしこれは、組織の原子にぶつかっているので、表面部分でレーザーのもつエネルギーを全部渡してしまうことになるので、組織破壊性が高いです。よって、軟組織の切開や硬組織の切削に使うことが出来ます。
このグループに属するのは、

  • Nd:YAGレーザー(ネオジウム-ヤグ)
  • Er:YAGレーザー(エルビウム-ヤグ)
  • CO2レーザー(炭酸ガス)

波長が長いグループには「固体レーザー」が多いです。CO2レーザーは「気体レーザー」ですが、その他のNd:YAGレーザー、Er:YAGレーザーともに「固体レーザー」です。軟組織用として、Nd:YAG、CO2レーザーが使えます。硬組織用として、Er:YAGが使えます。

Er:YAGだけ変人、最強の破壊力

波長の長さではCO2レーザーが一番大きいのに、なぜEr:YAGに負けてしまうのでしょうか。不思議ですね。縦軸の「水吸収係数」とは、「光線を水に入射させたとき、光線の強度がどのくらい減衰するか」を表したもの です。普通は、波長と比例して、水吸収係数は大きくなる(浅い部分でとまってしまう)のですが、Er:YAGだけは変で、波長の長さにしては水にすごく吸 収されてしまいます。吸収される、ということはレーザーのエネルギーをそこで全部出し尽くすということなので、浅い部分での破壊力が高いことになります。
Er:YAGは表面部での組織破壊力が大きく全ての歯科用レーザーのなかで唯一、硬組織(=歯や骨)を削る道具として認められています。
CO2レーザーは、粘膜の切開などに使われていますよね。臨床実習でも見たことがあるかもしれませんが、すごく焦げます。「熱への影響力がすごく強い」と覚えましょう。

2.中程度の波長=う蝕の検査用

どっちつかずの中程度の波長、半導体レーザーは初期う蝕の検査用のレーザーとし使われています。ダイアグノデント(レーザー蛍光法)で赤色半導体レーザーを歯質に照射して反射する蛍光を検知して、う蝕かどうかを判断します。655nmの赤色半導体レーザーを歯質に照射します。このグループはこの一つだけです。

 

以上の、おおずかみな理解があると、以下の本を読んでさらに理解が深まると思います。
保存系でお薦めの参考書を上げておきます。

 

【保存修復学】のお薦め参考書

1.保存修復学21 ★★★

「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼っってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。
編集の質は「保存修復学21」のほうが良いと思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。

2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆

あとは、写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。

ART(非侵襲的歯科治療)

ARTに関して、最近かなり注目されています。今回はこの問題です。
教科書にも記述がすくなく、WEBも情報が散漫。
大学の先生などにも伺いながら知識をまとめました。

 

109C-126

非侵襲的修復技法〈ART〉で正しいのはどれか。2つ選べ。
a  局所麻酔による除痛
b  Er:YAGレーザーによる齲窩開拡
c  手用切削器具の使用
d  齲蝕象牙質第一層の残置
e  コンポジットレジンによる修復

 

正答 c d

 

 

ART(非侵襲的歯科治療)

Atraumatic Restorative Treatment

  • 近年話題の歯冠修復方法
  • 発展途上国など電気が通ってない環境での緊急措置を想定
  • エアタービン、光照射器を使わない(電気使えないから)
  • 手用切削器具(エキスカベーターとか)でう蝕を削る
  • う蝕象牙質が残ってる状態で高強度グラスアイオノマーセメント(GCフジⅨ等)で充填
  • 感染象牙質しか削らないので、局所麻酔が必要ない。
  • グラスアイオノマーは物性が良くなってきており、最近では、一級窩洞にも使用可能
  • 費用が安いことがポイント
  • あまりにも臨床成績がよいので、適応症が拡大している(・乳臼歯う触・高齢者の根面う蝕)

 

 

こちらを読むのもおもしろいです。

http://www.mi21.net/mi/column/#04

穿通、穿下、穿孔、穿刺の違い


穿通、穿下、穿孔、穿刺の違い

「穿」という漢字、よく見るけど馴染みが薄いです。

穿通
穿下
穿孔
穿刺

いずれも理解しなければいけないですが、それぞれどんな意味か説明できますか?
それぞれ主に使用されるシチュエーションを頭に思いうかべられますか?

 

穿通と穿下

 

急性う蝕慢性う蝕の違いで出てくるのが、
急性=穿通性慢性=穿下性
という表現です。
いつもどっちがどっち?かわからなくなります。
私は以下のようにまとめています。

 

 

full.jpeg

 

穿通は穴が開いてじてしまうので、歯髄腔まで穴が最短距離で繋がるイメージです。
穿下はそのう蝕病巣の真下で横に広がっていくイメージです。すぐ下で!と覚えましょう

【穿】という字は【せん】とよびます。
いずれも穴が空いたり、通り抜けたりするという意味の漢字です。

【穿】せん

  • 穴をうがつ。=穴をあける。
  • 筒状のものに物を通す。
  • 服を着る。
  • 通り抜ける。

 

髄室穿孔

歯内療法で、麻酔抜髄をする場合に、「髄室穿孔」という用語が出てきます。
抜髄の手続きを復習しましょう。

  1. 齲窩開拡・軟化象牙質除去
  2. 髄室穿孔
  3. 髄角除去・天蓋除去・髄室開拡
  4. 冠部歯髄除去
  5. 根管口フレアー形成
  6. 根管形成
  7. 化学的清掃
  8. 根管充填
  9. 仮封

・・・と続いていきます。

根尖孔の穿通

根尖孔にファイルで穴をあける時には「穿通」という言葉を使っています。
根尖部に膿瘍があるときには、ファイルで穿通して、排膿路の確保をします。

 

Ni-Tiファイルで最初に根管を穿通させる

Ni-Ti(ニッケルチタン)ロータリーファイルでは、拡大をする前に最初に細いKファイルを「穿通」させてからNi-Tiファイルに寄る根管処置を開始します。
これは、Ni-Ti(ニッケルチタン)ファイルが、狭い根管にハマってしまうとすぐ折れてしまうためです。Ni-Tiファイルの一番細い番手よりも少し太い15とか25ぐらいのKファイルで、一度根管を穿通させることで、Ni-Tiファイルが引っかからずに、安全に根管形成することができます。

 

 

 

穿下性骨吸収

また、「穿下性骨吸収」という言葉が、矯正ででてきます。
矯正力がかかる圧迫側で、その直下の歯槽骨で破骨細胞により骨吸収が起こることです。

 

穿下性骨吸収1

 

 

穿下性骨吸収2

 

穿下性骨吸収2

上の図で水色が歯槽骨、オレンジが象牙質(歯)です。圧迫を直接受ける側の歯根膜が矯正力により貧血帯になり、硝子様変性し、隣の充血している組織から肉芽組織が増殖し、その中のマクロファージが硝子様変性を貪食します。また、マクロファージは、充血帯から、そのまま歯槽骨側にも移動し、歯槽骨の「直接性骨吸収」を行います。また、貧血帯直下へも足を伸ばし、ここで「穿下性骨吸収」を行います。穿下性は直接性に比べて吸収の速度が遅いです。これで、歯が圧迫側へ移動し、牽引側では骨添加が起きます。

 

穿孔と穿刺

穿孔は、いわゆるパーフォレーションで、根管治療などの時にファイルで根に穴を開けてしまう時などに表現されます。
穿刺は、唾液腺腫瘍や大きな膿瘍などを調べるときに、注射をその液体が溜まっている箇所にさして内容物を採取します。これを穿刺吸引といいます。そのまま細胞診に使うときは穿刺吸引細胞診となります。。
さて、いかがでしょうか?

穿通|penetration
穿下|?
穿孔|perforation、drilling
穿刺|stab

のイメージはつきましたでしょうか?