歯科用レーザー、わかりずらいですよね。今回はこの問題です。
106C-91
Er:YAGレーザーの特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。a 熱の影響が大きい。
b 組織深部に到達する。
c 固体レーザーである。
d 波長は可聴域にある。
e 水への吸収率が高い。正答 c,e
Er:YAGはエルビウムヤグと呼びますが、まったく馴染みがなく、なかなかイメージをもてません。他にもCO2レーザーや半導体レーザー、アルゴンガスレーザーなど、いろんな種類がでてきて、それぞれを大づかみに理解するのが難しい感じになっています。以下のように考えるとわかりやすいと思います。
レーザーは3種類に分類しましょう。
レーザー、いろいろあって、よくわからないのですが、とりあえず、上図のように3種類に分類しましょう。このグラフの形も少し頭にいれたほうがよいです。縦軸が「水吸収係数」、横軸が「波長=レーザーの振幅」です。
縦軸の「水吸収係数」とは、「光線を水に入射させたとき、光線の強度がどのくらい減衰するか」を表したものです。普通は、波長と比例して、水吸収係数は大きくなります。(=浅い部分でとまってしまう)
波長が短い=浸透性が高い
波長が長い=浸透性が低い
電磁波の大原則を覚えましょう。光もX線ような放射能も電波もみんな電磁波で、単に波長の違いで違う名前を与えられているだけです。そして、波長が長くなればなるほど、浸透性が低くなります。正確ではないんですが、下図のようなイメージをすると覚えやすいです。つまり、レーザーの波長レベルまで人体を拡大すると人体の原子レベルまで拡大されてちょうど網の目のような感じなります。この網の目を通り抜けやすいのは、波長が短いレーザーです。逆に波長が長くなると、その網に引っかかりやすくなり、浸透性が低くなります。
1.波長が短い=コンポジットレジンの光照射用
改めて、グラフをみてみると、波長が短いグループは、浸透性がよいので奥の方まで届きます。この性質は、コンポジットレジンの光照射に適しているので、それ用のレーザーとして使用されていました。(現在はLEDレーザーができたので、これらは使用されていません。)
このグループに属すのは、
- Xeレーザー(キセノン)
- Arレーザー(アルゴン)
- He-Neレーザー(ヘリウム-ネオン)
アルゴンとか、ヘリウムとか、気体が多いですね。
波長が短いグループは「気体レーザー」が多いとわかりますね。
3.波長が長い=浅い部分までしかいない=表面の破壊力が大きい
波長が長いと、表面で止まってしまいます。しかしこれは、組織の原子にぶつかっているので、表面部分でレーザーのもつエネルギーを全部渡してしまうことになるので、組織破壊性が高いです。よって、軟組織の切開や硬組織の切削に使うことが出来ます。
このグループに属するのは、
- Nd:YAGレーザー(ネオジウム-ヤグ)
- Er:YAGレーザー(エルビウム-ヤグ)
- CO2レーザー(炭酸ガス)
波長が長いグループには「固体レーザー」が多いです。CO2レーザーは「気体レーザー」ですが、その他のNd:YAGレーザー、Er:YAGレーザーともに「固体レーザー」です。軟組織用として、Nd:YAG、CO2レーザーが使えます。硬組織用として、Er:YAGが使えます。
Er:YAGだけ変人、最強の破壊力
波長の長さではCO2レーザーが一番大きいのに、なぜEr:YAGに負けてしまうのでしょうか。不思議ですね。縦軸の「水吸収係数」とは、「光線を水に入射させたとき、光線の強度がどのくらい減衰するか」を表したもの です。普通は、波長と比例して、水吸収係数は大きくなる(浅い部分でとまってしまう)のですが、Er:YAGだけは変で、波長の長さにしては水にすごく吸 収されてしまいます。吸収される、ということはレーザーのエネルギーをそこで全部出し尽くすということなので、浅い部分での破壊力が高いことになります。
Er:YAGは表面部での組織破壊力が大きく全ての歯科用レーザーのなかで唯一、硬組織(=歯や骨)を削る道具として認められています。
CO2レーザーは、粘膜の切開などに使われていますよね。臨床実習でも見たことがあるかもしれませんが、すごく焦げます。「熱への影響力がすごく強い」と覚えましょう。
2.中程度の波長=う蝕の検査用
どっちつかずの中程度の波長、半導体レーザーは初期う蝕の検査用のレーザーとし使われています。ダイアグノデント(レーザー蛍光法)で赤色半導体レーザーを歯質に照射して反射する蛍光を検知して、う蝕かどうかを判断します。655nmの赤色半導体レーザーを歯質に照射します。このグループはこの一つだけです。
ちなみに、Er:YAGレーザーので切削は以下でみることができます。ダイヤモンドポイントで削る時よりも、振動は少なく歯髄への害が少ないですが、表面が凸凹になりやすく、平坦に窩洞形成できません。
以上の、おおずかみな理解があると、以下の本を読んでさらに理解が深まると思います。
保存系でお薦めの参考書を上げておきます。
【保存修復学】のお薦め参考書
1.保存修復学21 ★★★
「医歯薬出版の保存修復学」と上の「保存修復学21」が2大巨塔ですが、僕は上にもリンク貼っってる「保存修復学21」をおすすめします。理由は写真が大きいからです。あとは診断や手技などのまとめからも21のシリーズのほうが、読んでいてわかりやすいです。
編集の質は「保存修復学21」のほうが良いと思います。歯内療法でも同じ構造で、医歯薬出版のものよりも、21シリーズのほうが僕はわかりやすいです。この本が教科書に指定されている学校はうらやましいなーと思います。
2.カラーアトラスハンドブック 保存修復臨床ヒント集 ★★☆
あとは、写真をとにかく見て、知らない器具や処置の種類を減らすことです。
このカラーアトラスハンドブックシリーズは少し古いのですが、それでも基本的な処置に関してはかなりリアリティつかめるのでおすすめです。特に文章読むのが苦手で、、、という人は暇な時にパラパラめくっておくだけでも、すごくためになると思いますよ。