穿通、穿下、穿孔、穿刺の違い
「穿」という漢字、よく見るけど馴染みが薄いです。
穿通
穿下
穿孔
穿刺
いずれも理解しなければいけないですが、それぞれどんな意味か説明できますか?
それぞれ主に使用されるシチュエーションを頭に思いうかべられますか?
穿通と穿下
急性う蝕と慢性う蝕の違いで出てくるのが、
急性=穿通性慢性=穿下性
という表現です。
いつもどっちがどっち?かわからなくなります。
私は以下のようにまとめています。
穿通は穴が開いて通じてしまうので、歯髄腔まで穴が最短距離で繋がるイメージです。
穿下はそのう蝕病巣の真下で横に広がっていくイメージです。すぐ下で!と覚えましょう
【穿】という字は【せん】とよびます。
いずれも穴が空いたり、通り抜けたりするという意味の漢字です。
【穿】せん
- 穴をうがつ。=穴をあける。
- 筒状のものに物を通す。
- 服を着る。
- 通り抜ける。
髄室穿孔
歯内療法で、麻酔抜髄をする場合に、「髄室穿孔」という用語が出てきます。
抜髄の手続きを復習しましょう。
- 齲窩開拡・軟化象牙質除去
- 髄室穿孔
- 髄角除去・天蓋除去・髄室開拡
- 冠部歯髄除去
- 根管口フレアー形成
- 根管形成
- 化学的清掃
- 根管充填
- 仮封
・・・と続いていきます。
根尖孔の穿通
根尖孔にファイルで穴をあける時には「穿通」という言葉を使っています。
根尖部に膿瘍があるときには、ファイルで穿通して、排膿路の確保をします。
Ni-Tiファイルで最初に根管を穿通させる
Ni-Ti(ニッケルチタン)ロータリーファイルでは、拡大をする前に最初に細いKファイルを「穿通」させてからNi-Tiファイルに寄る根管処置を開始します。
これは、Ni-Ti(ニッケルチタン)ファイルが、狭い根管にハマってしまうとすぐ折れてしまうためです。Ni-Tiファイルの一番細い番手よりも少し太い15とか25ぐらいのKファイルで、一度根管を穿通させることで、Ni-Tiファイルが引っかからずに、安全に根管形成することができます。
穿下性骨吸収
また、「穿下性骨吸収」という言葉が、矯正ででてきます。
矯正力がかかる圧迫側で、その直下の歯槽骨で破骨細胞により骨吸収が起こることです。
上の図で水色が歯槽骨、オレンジが象牙質(歯)です。圧迫を直接受ける側の歯根膜が矯正力により貧血帯になり、硝子様変性し、隣の充血している組織から肉芽組織が増殖し、その中のマクロファージが硝子様変性を貪食します。また、マクロファージは、充血帯から、そのまま歯槽骨側にも移動し、歯槽骨の「直接性骨吸収」を行います。また、貧血帯直下へも足を伸ばし、ここで「穿下性骨吸収」を行います。穿下性は直接性に比べて吸収の速度が遅いです。これで、歯が圧迫側へ移動し、牽引側では骨添加が起きます。
穿孔と穿刺
穿孔は、いわゆるパーフォレーションで、根管治療などの時にファイルで根に穴を開けてしまう時などに表現されます。
穿刺は、唾液腺腫瘍や大きな膿瘍などを調べるときに、注射をその液体が溜まっている箇所にさして内容物を採取します。これを穿刺吸引といいます。そのまま細胞診に使うときは穿刺吸引細胞診となります。。
さて、いかがでしょうか?
穿通|penetration
穿下|?
穿孔|perforation、drilling
穿刺|stab
のイメージはつきましたでしょうか?